最新記事

変異株

感染は日本とアメリカが中心、すでに35カ国で確認されたR.1変異株の危険度

Dangerously Mutated R.1 COVID Variant Detected in 35 Countries

2021年9月24日(金)17時42分
サマンサ・ロック
新型コロナワクチン

Andrew Kelly-REUTERS

<せっかくワクチンで抗体を獲得しても、その効果を薄れさせる変異株が流行すれば人類は再び苦戦を強いられることに>

世界でワクチン接種が進んでいるが、今後の新型コロナウイルスとの戦いの行方を決めるのは、変異株への対応となりそうだ。そうしたなか、感染力の強さとワクチンで得られた抗体を回避する可能性で、科学者たちが警戒を強めているのがR.1系統の変異株だ。R.1株はこれまで、日本やアメリカを含む世界35カ国で検出されている。

この変異株がアメリカで最初に確認されたのは2021年3月のこと。ケンタッキー州にある老人介護施設の入所者と職員合わせて50名近くが感染した。それ以降、47州で確認されていることがデータからわかっている。

最初に日本で検出された(国外から移入したとみられるが起源不明)このR.1株は、ある変異を有している。それにより、2度のワクチン接種を終えた人の体内にできた抗体ですら、回避できる可能性があるという。

新型コロナウイルスの変異株データサイト「Outbreak.info」によれば、9月24日現在でR.1が検出された人は、世界全体で1万573人に上る。Outbreak.Infoは、インフルエンザのゲノム配列を共有する世界的な科学イニシアチブGISAIDの感染報告ネットワークのデータをもとに、新型コロナウイルス変異株についてオープンソースデータを提供している。

これまでの検出数はアメリカと日本が世界で最も多く、それぞれ2266人と7521人となっている。

GISAIDのデータによれば、アメリカでR.1株が直近で検出されたのは8月6日で、8月全体の全新規感染者に占める割合は0.5%以上だった。検出数が最多なのはメリーランド州で、最初に確認されて以降、399人に上っている。

抗体の効果を低下させる変異

現在のところ感染者数は少ないが、それでもR.1株が有する変異によって、より感染しやすくなる可能性があると、ハーバード大医学大学院の元教授ウィリアム・ヘーゼルタインは考えている。ヘーゼルタインは9月20日にフォーブスに寄稿し、R.1で確認された5つの変異が「抗体への耐性強化」につながる可能性があると述べた。

R.1株はこうした変異を持つことで、ワクチン接種で作られる抗体や、すでに感染した人の抗体をより巧みに回避できるかもしれないということだ。

米疾病対策センター(CDC)によれば、R.1株には、抗体が働く際の標的となる「スパイクタンパク質」にW152L変異が見られ、それが抗体の効果を低下させる可能性がある。

W152L変異は、インドで初めて検出された「デルタ株」のマイナー・バリアントにも存在している。デルタ株は現在アメリカで優勢となっており、感染全体の98%以上がデルタ株で占められていることが、CDCのデータでわかっている。

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス株の監視を継続しており、感染率に応じて分類している。9月21日には、変異株のイータ株、イオタ株、カッパ株について、「懸念される変異株」から「監視下の変異株」へと格下げした。ほかの株によって感染拡大が抑えられたのがその理由だ。
(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ436ドル安、CPIや銀行決算受

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中