最新記事

心理

他者を思いやり行動する度合い、日本は世界で最も高かった

2021年9月1日(水)17時45分
松岡由希子

他者を思いやり、その要望や願いを汲み取ったうえで、自らの意思を決め、行動する「ソーシャルマインドフルネス」の度合いを調べた Huseyin Bostanci-iStock

<他者を思いやり、その要望や願いを汲み取ったうえで、自らの意思を決め、行動する「ソーシャルマインドフルネス」度合いが最も高かったのは日本だった>

今、この瞬間、他者を思いやり、その要望や願いを汲み取ったうえで、自らの意思を決め、行動する「ソーシャルマインドフルネス」の度合いことを「ソーシャルマインドフルネス」という。このような社会的行動の傾向は国によって異なることが明らかとなった。

日本が最も高く、オーストリア、メキシコ、イスラエルがつづく

蘭ライデン大学の心理学者ニールス・ファン=ドソン准教授は、青山学院大学の清成透子教授ら31カ国64名の研究者とともにソーシャルマインドフルネスに関する研究に取り組み、2021年8月31日、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」でその成果を発表した。これによると、世界31カ国でソーシャルマインドフルネスの度合いが最も高かったのは日本であったという。

この研究では、米国、英国、ドイツ、フランス、オランダ、日本、中国、韓国を含む31カ国の18歳から25歳までの男女8354名を対象に、ソーシャルマインドフルネスの度合いを調べるテストを実施。

たとえば、リンゴを使ったテストでは、「ボウルに赤いリンゴ1個と青いリンゴ2個があり、自分がいずれか1個を取った後、見知らぬ誰かがやってきて残された2個のリンゴを選ぶとしたら、どのリンゴを選ぶか」をたずねた。自分が赤いリンゴを選べば、後の人には青いリンゴしか残されない一方、自分が青いリンゴを取れば、後の人は赤いリンゴか青いリンゴを選べるため、青いリンゴを選ぶほうがソーシャルマインドフルな行動といえる。このようにリンゴや野球帽、ボールペンなどを対象物にし、提示する個数を変えたりして、各被験者に同様のテストを24回行わせた。

F1-1.large.jpeg

Doesum-PNAS 2021

国ごとにテストの平均スコアを算出した結果、日本が最も高く、オーストリア、メキシコ、イスラエルがこれに次いだ。また、最もスコアが低かったのはインドネシアで、トルコ、インド、南アフリカでもこれに次いでスコアが低くなった。

環境保護への意識に正の相関が認められた

研究論文の筆頭著者であるファン=ドソン准教授は、一連の研究結果について「『国によって違いがある』ということがポイントであって、スコアが高い国が『良い』というわけではない」と強調する。

また、今回の研究結果では、国ごとのソーシャルマインドフルネスの度合いと環境保護への意識に正の相関が認められたものの、因果関係があるとまではいえない。ファン=ドソン准教授は「この関係が何であるかについてはさらなる調査が必要だ」と今後の研究課題を指摘している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中