最新記事

日本社会

フルタイムでもワーキングプア......非正規公務員の7割が年収200万円未満

2021年9月15日(水)13時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
賃金格差

正規公務員と非正規公務員の収入にはかなりの開きがある AndreyPopov/iStock.

<ブラック労働撲滅の旗振りをするはずの「官」の世界でまかり通るあきれた現状>

公務員非正規女性全国ネットワークが今年春に行った調査によると、非正規公務員の半数が年収200万円未満だという。働く貧困層、それも「官」の世界で働く、いわゆる官製ワーキングプアだ。

今や「官」の世界も非正規化が進んでおり、非正規の比重は小さくない。生活苦や正規との格差を訴える声が看過できなくなり、こういう調査が実施されたのだろう。改革を促す貴重なデータだ。

なお公務員の年収は、総務省の『就業構造基本調査』からも分かる。産業分類が「公務」という有業者を取り出し、年間所得の分布が得られる。2017年調査だと、所得が分かる非正規公務員は約38万人だ(正規公務員は196万人)。分布をみると非正規公務員の70.7%が所得200万円未満で、その比率は上記の団体の調査結果よりも高い。中央値(median)を計算すると、非正規公務員は149万円で、正規公務員の561万円とものすごい開きがある。

地域別に見ると、もっと悲惨な値が出てくる。47都道府県別に非正規公務員の所得分布を出し、中央値を県ごとに計算してみた。高い順に並べると<表1>のようになる。

data210915-chart01.png

どの県も200万円に届かず、150万円にも満たない県が多い。色付きは140万円未満で、最下位の鹿児島は115万円だ。筆者の郷里だが、生活が成り立つレベルではない。全国どこにおいても、非正規公務員はプアであることが分かる。

非正規公務員は女性が多く、夫の扶養内で就業調整している人が多いのではないか、という疑問もあるだろう。だが就業時間の分布を見ると、そうでもない。正規も非正規も最頻階級は週35~42時間だ。非正規でも、3人に1人が週35時間以上のフルタイム就業となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご

ワールド

中国、EU産ブランデーの反ダンピング調査を再延長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中