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ハッブル宇宙望遠鏡が約1400光年離れたハービック・ハロー天体を観測

2021年9月6日(月)17時15分
松岡由希子

生まれたばかりの星は非常に活発であり、急速に移動する電離気体のジェットを放出することがある Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Nisini

<ハッブル宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」の観測データをもとに、オリオン座方向で輝くハービック・ハロー天体の画像が公開された>

欧州宇宙機関(ESA)は、2021年8月30日、ハッブル宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」の観測データをもとに、地球から約1400光年離れたオリオン座方向で青い剣のように輝く画像を公開した。

特殊な条件下で形成される珍しい天体現象

この「青い剣」の正体は、生まれたばかりの恒星「IRAS 05491+0247」の両極から宇宙へと噴出する電離気体のジェットからなるハービック・ハロー天体(HH天体)「HH111」だ。

ハービック・ハロー天体は、特殊な条件下で形成される比較的珍しい天体現象として知られる。生まれたばかりの星は非常に活発であり、急速に移動する電離気体のジェットを放出することがある。

この気体は非常に高温であるため分子と原子が電子を失い、強く帯電する。このような電離気体の流れが星を取り巻くガスや塵の雲と秒速数百キロの速度で衝突し、ハービック・ハロー天体が形成される。

「HH111」は、オリオン座B分子雲に位置し、星の降着物質であるガスや塵が集まるトーラス(円環面)近くの連星のうちの1つによって形成されている。ジェットは両極から12光年にわたって伸び、その内部では陽子や電子が秒速およそ500キロの高速で移動している。

周囲のガスや塵がほとんどの可視光を吸収するため、観測しづらい

2000年3月に公開されたハッブル宇宙望遠鏡の観測データでは、この星の伴星からも垂直方向に小さなジェットが噴出しているほか、これら2つの星から離れて3つ目の星があることも確認されている。

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Credit:NASA/ESA

ハービック・ハロー天体は、光学波長で多くの光を放出しているが、周囲のガスや塵がほとんどの可視光を吸収するため、観測しづらい。ハッブル宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3」は、光学波長と赤外波長で撮像することから、ガスや塵の影響を受けずに「HH111」を観測できたという。

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