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地球温暖化100年に1度の極端水位が今世紀末までに毎年発生するおそれ
極端水位の発生頻度が100倍に高まる Michael DeMocker/USA TODAY Network via REUTERS
<100年に1度くらいの低頻度で発生していた極端水位が、今世紀末までに毎年発生するようになるおそれがあることが明らかになった>
高潮や満潮、高波によって極端に水位が上昇する「極端水位(ESL)」は、沿岸域の集落や生態系に甚大な影響をもたらす。これまで100年に1度くらいの低頻度で発生していた極端水位が、地球温暖化に伴って、今世紀末までに毎年発生するようになるおそれがあることが明らかとなった。
21世紀末までに極端水位の発生頻度が100倍に高まる
米国エネルギー省(DOE)太平洋北西部国立研究所(PNNL)の研究チームは、世界7238地点を対象に、地球の気温上昇が産業革命前比1.5度〜5度となった場合の極端水位について予測。2021年8月30日、学術雑誌「ネイチャー・クライメートチェンジ」でその研究成果を発表した。
これによると、「パリ協定」が努力目標として定める産業革命前比1.5度の気温上昇でも、対象地点の約半数で、21世紀末までに極端水位の発生頻度が100倍に高まると予測。産業革命前比2度の気温上昇では、極端水位の発生頻度が100倍となる地点がさらに14%増える。また、早い地点では、2070年代に極端水位の発生頻度が100倍に上昇する可能性もある。
極端水位の海面上昇によって最も影響を受けるのは低緯度の熱帯地域だ。南半球、地中海やアラビア半島の沿岸、北米太平洋岸の南側、ハワイ、カリブ海、フィリピン、インドネシアなどで影響が懸念されている。
極端水位は今世紀末までに世界全体でより頻繁に起こる
研究チームは、一連の研究成果をふまえ、「パリ協定で定められた目標が達成されるとしても、沿岸域に洪水をもたらす極端な現象が世界の多くの地域で頻繁に起こるおそれがある」と警鐘を鳴らす。
今回の研究結果と同様、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の2019年のレポートでも「地球温暖化により、極端水位の事象は今世紀末までに世界全体でより頻繁に起こるようになるだろう」と言及されていた。また、英イースト・アングリア大学らの研究チームは、2021年3月に発表した研究論文において「海面上昇が沿岸域に与える影響は従来の4倍にのぼる」ことを示している。
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