最新記事

ワクチン

ショーン・ペン、撮影現場でコロナワクチン義務化を要求「そうでないなら出演拒否」

2021年7月26日(月)16時58分
猿渡由紀

撮影現場でのコロナワクチン義務化を要求したショーン・ペン REUTERS/Reinhard Krause

<ショーン・ペンが撮影関係者全員にワクチン接種を要求。そうでない限りテレビシリーズ「Gaslit」の撮影現場に戻らないと言い出した>

新型コロナウイルスのワクチン接種は強制できるのか、できないのか。曖昧な態度のまま先に進まないハリウッドに、ショーン・ペンが撮影関係者全員にワクチン接種を要求。全員がワクチンを打っている状況でないかぎり、「Gaslit」の撮影現場に戻らないと言い出したのである。NBCユニバーサルが制作する「Gaslit」は、ジュリア・ロバーツやダン・スティーブンスらが出演するテレビシリーズ。撮影はすでに始まっており、主役のペンが戻らないとなると、大変なことになる。

ペンがここまで強気な態度に出たことは、驚きでもあるが、これまでの彼の行動を振り返るとわからなくもない。アクティビストとして熱心な活動を行うことでも知られるペンは、L.A.のコロナ対策で大活躍したヒーローなのだ。

ハイチ地震が起きた2010年に彼が創設した非営利団体CORE(Community Organized Relief Effort)は、コロナパニックが起きてすぐ、L.A.で大規模なPCR検査ができるようすぐさま動き、あっというまに実現。L.A.は、たちまち、全米でトップクラスの検査数を誇るようになったのである。中心地の検査場までなかなか行けない、比較的貧しい人々が住むエリアにも足を運んだし、ニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事からも手助けを求められて、クオモから「すべてが落ち着いたら食事を奢りたい」とまで感謝されている。

ワクチンが承認されてからも同じような行動力を見せ、彼とCOREは、できるだけ早く多くの人々にワクチン接種することに尽力した。カリフォルニアは6月15日から基本的にパンデミック前の日常が戻ったが、ペンなしでそれが実現できたとは到底思えない。

ワクチン必須を雇用条件に組み込んでもいいものか

だが、打ちたい人が全員打ってしまうと、接種のペースは突然落ちてしまったのである。ワクチンはたっぷりあり、予約なしでも打てる状況なのに、打ちたくない人があいかわらず拒否を続けるせいだ。そこへデルタ株が到来し、L.A.では再び感染が拡大。感染者の99%以上がワクチン未接種とあり、コロナを終わらせるにはこうした人たちにワクチンを打ってもらうしかないことは明白になっていた。

そんな状況下で、リベラルなハリウッド(ワクチン拒否派は圧倒的に保守が多い)では、ワクチン必須を雇用条件に組み込んでもいいものかの話し合いがなされてきている。その結果、つい最近、作品単位で、「ゾーンA」にいるクルーにはワクチンを義務付けることができるようになった。「ゾーンA」とは、俳優の至近距離。つまり、彼らと直接接する距離にいないクルーは、ワクチンをしなくても良いということだ。それに、あくまで作品単位であり、業界全体のルールではない。

それでは十分でないと、ペンは思ったのである。みんなの安全のためにはみんながワクチンを接種していることが大事と考えるペンは、一歩踏み込んで全員にそれを要求。さらに、COREが接種のお手伝いをするとも提案した(COREの申し出がなくとも、NBCユニバーサルもキャストとクルーに接種の手筈を整えており、そのための詳しい案内を出している)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジャワ島最高峰のスメル山で大規模噴火、警戒度最高に

ビジネス

中国、債券発行で計40億ユーロ調達 応募倍率25倍

ビジネス

英CPI、10月3.6%に鈍化 12月利下げ観測

ビジネス

インドネシア中銀、2会合連続金利据え置き ルピア安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中