最新記事

インタビュー

米欧にも中露にも取り込まれない...ポーランド首相、独占インタビュー

POLAND AT CENTER STAGE

2021年7月30日(金)17時52分
ジョシュ・ハマー、マシュー・ティアマンド

その成長を促すには、まず北のバルト海沿岸と南のアドリア海・黒海沿岸を南北につなぐ強固なインフラが必要だ。三海洋イニシアチブはその構築を目指す。ヨーロッパでは、東西をつなぐ各種のインフラはかなり発達しているが、北欧諸国から南のギリシャまでをつなぐインフラができていない。

わが国はこの3つの海をつなぐ南北ラインの中央に位置しており、この地域では面積も人口も一番だ。だが現状では戦略的・防衛的な構造に穴が開いている。ポーランドはEUの東の端であり、NATOの東の端でもある。地図を見れば分かるとおり、誰よりも(東からの)脅威にさらされており、大きなリスクを抱えている。

だから三海洋イニシアチブを発展させ、不足しているインフラを補っていくことで、私たちは大西洋の両岸を結ぶ共同体におけるEUの存在感を向上させたい。三海洋イニシアチブの発展はアメリカにとっても西欧にとっても利益となる。決して対立するものではない。

210803p42po_02.jpg

中欧の地域協力機構の会合で集まった各国首相 THIERRY MONASSE-POOL/GETTU IMAGES

――もう少しロシアの脅威について聞きたい。ロシアによる侵略や脅威(物理的な国境を越えた直接的な侵略と、サイバー戦や偽情報の流布、スパイ活動などを通じた間接的な侵略)に対して、EUが一致して対応できることは何だと思うか?

対ロシア政策には一貫性と忍耐が必要とされる。ロシアの戦略の安定性は、ポーランドとEUにとって難題だからだ。(ロシアに比べると)こちらは政権交代が多いし、西へ行けば行くほどロシアの脅威は感じにくくなる。

それでもロシアによるウクライナ領クリミア半島などの占領に対しては、われわれは一致した対応を取れた。これ以上の侵略的行為を控えるよう、圧力をかけてもいる。

こちら側の戦略的な視点から言えば、中国が今以上に大きくなって世界中に影響力を行使するのを防ぐために、ロシアと手を組むという選択肢はあり得る。そのためにはロシアが真に平和的な国になり、領土拡大の野望を捨てる必要があるが、それはまずあり得ないだろう。

――ノルドストリーム2(ロシア産天然ガスをバルト海経由でドイツまで運ぶパイプライン)計画について聞きたい。ジョー・バイデン米大統領は(カナダの原油をアメリカ南部まで運ぶパイプライン)、キーストーンXLの建設許可を取り消す一方、ノルドストリーム2には事実上のゴーサインを出した。アメリカの保守派は猛反発しているが、ポーランドの立場はどうか?

わが国としては、アメリカの政策転換に大いに失望している。ここ数年、わが国はノルドストリーム2の建設を阻止または遅らせるために米政権と協力してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、EUにメタン排出法の適用除外を要求=政府文書

ビジネス

ウォン安と不動産価格上昇、過剰流動性だけが背景では

ビジネス

12月の豪消費者信頼感指数、悲観論が再び優勢 物価

ビジネス

ベトナムEVビンファスト、対インドネシア投資拡大へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中