「接種すれば現金給付」それでもロシア国民が、自国産ワクチンを信じない訳
NYET TO VACCINATION
ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は4月末、ワクチンは十分あり、需要が接種促進のカギだと語った。
ロシア人がスプートニクVを嫌がるもう1つの要因は、安全性と有効性を確認する大規模な治験の完了を待たずに市場に投入されたことだ。今年2月、英医学誌ランセットにロシアで約2万人を対象に行われた治験の中間報告が掲載され、安全で新型コロナに対する有効性も高そうだとされた。それでも掲載直後の2月下旬にモスクワの独立系世論調査機関レバダセンターが行った調査では、スプートニクVの接種に前向きな人は約30%止まりだった。
アウトブレイク(爆発的拡大)を抑え込んでいると当局が宣伝しているのも接種が進まない一因ではないかと、ドラガンは言う。新型コロナ関連のほとんどの規制が撤廃され、政府高官は政府のパンデミック(世界的大流行)対策は大成功だとたたえる。市民は当然、「アウトブレイクが終わったのなら、なんで今更ワクチンを接種する必要があるの?」という気持ちになる。
公衆衛生専門家ワシリー・ウラソフによれば、政府は外国製ワクチンは危険だが自国製は大丈夫だと説明している。国営テレビは欧米のワクチンの副反応を報じる一方、スプートニクVの国際的な成功をたたえた。
プーチン大統領が接種も、その様子は非公開
国営テレビが本格的な接種促進キャンペーンに乗り出したのは3月下旬。ウラジーミル・プーチン大統領も3月23日に接種したことを発表したが、接種の様子は非公開だった。
一方、ロシアのアウトブレイクは終わるどころか拡大の兆候があるとウラソフは指摘する。「現在ロシアの1日の新規感染者数はアウトブレイクがピークに達した昨年5月並み」で、しかも1日の死者数は1年前の2倍に達しているという。
4月23日、タチアナ・ゴリコワ副首相は7地域(地域は特定せず)で感染が拡大しているとし、一部の「接種率の低さ」を非難した。
それでもモスクワの豊富なワクチンは自国で接種できない外国人を引き付けている。4月にはドイツからのグループがホテルで1回目の接種を受けた。シュツットガルトから来た46歳のソフトウエア開発者は言う。「ここには地元の人々の需要を上回る量のワクチンがある」