最新記事

ロシア

「接種すれば現金給付」それでもロシア国民が、自国産ワクチンを信じない訳

NYET TO VACCINATION

2021年6月15日(火)20時49分
メアリー・エレン・カグナソラ

ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は4月末、ワクチンは十分あり、需要が接種促進のカギだと語った。

ロシア人がスプートニクVを嫌がるもう1つの要因は、安全性と有効性を確認する大規模な治験の完了を待たずに市場に投入されたことだ。今年2月、英医学誌ランセットにロシアで約2万人を対象に行われた治験の中間報告が掲載され、安全で新型コロナに対する有効性も高そうだとされた。それでも掲載直後の2月下旬にモスクワの独立系世論調査機関レバダセンターが行った調査では、スプートニクVの接種に前向きな人は約30%止まりだった。

アウトブレイク(爆発的拡大)を抑え込んでいると当局が宣伝しているのも接種が進まない一因ではないかと、ドラガンは言う。新型コロナ関連のほとんどの規制が撤廃され、政府高官は政府のパンデミック(世界的大流行)対策は大成功だとたたえる。市民は当然、「アウトブレイクが終わったのなら、なんで今更ワクチンを接種する必要があるの?」という気持ちになる。

公衆衛生専門家ワシリー・ウラソフによれば、政府は外国製ワクチンは危険だが自国製は大丈夫だと説明している。国営テレビは欧米のワクチンの副反応を報じる一方、スプートニクVの国際的な成功をたたえた。

プーチン大統領が接種も、その様子は非公開

国営テレビが本格的な接種促進キャンペーンに乗り出したのは3月下旬。ウラジーミル・プーチン大統領も3月23日に接種したことを発表したが、接種の様子は非公開だった。

一方、ロシアのアウトブレイクは終わるどころか拡大の兆候があるとウラソフは指摘する。「現在ロシアの1日の新規感染者数はアウトブレイクがピークに達した昨年5月並み」で、しかも1日の死者数は1年前の2倍に達しているという。

4月23日、タチアナ・ゴリコワ副首相は7地域(地域は特定せず)で感染が拡大しているとし、一部の「接種率の低さ」を非難した。

それでもモスクワの豊富なワクチンは自国で接種できない外国人を引き付けている。4月にはドイツからのグループがホテルで1回目の接種を受けた。シュツットガルトから来た46歳のソフトウエア開発者は言う。「ここには地元の人々の需要を上回る量のワクチンがある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、アンソロピック技術の使用停止指示 「サ

ワールド

アングル:5年目迎えたウクライナ戦争、戦車が消えド

ビジネス

パラマウント、WBD買収へ 第3四半期完了の見通し

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ521ドル安 イラン緊迫や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石が発見される...ほかの恐竜にない「特徴」とは
  • 4
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 5
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 6
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 7
    トランプがイランを攻撃する日
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中