最新記事

オーストラリア

オーストラリア、一面クモの巣で覆われる

2021年6月18日(金)18時00分
松岡由希子

豪雨と洪水に見舞われた豪ビクトリア州ギプスランドが一面、クモの巣に覆われた twitter

<6月中旬、豪雨と洪水に見舞われた豪ビクトリア州ギプスランドで、低木帯が一面、クモの巣に覆われ、その様子をとらえた動画がSNS上で話題となっている>

2021年6月中旬、豪雨と洪水に見舞われた豪ビクトリア州ギプスランドで、低木帯が一面、クモの巣に覆われ、その様子をとらえた動画がSNS上で話題となっている。クモの巣に無数に点在する黒い点は、普段、落葉や土の中に生息しているクモだ。

クモは、しばしば糸を使って移動する。クモの幼体は長い糸を出し、木など、周囲の物体にこれを引っ掛けて登る。この現象を「バルーニング」という。ギプスランドでは、洪水の発生により、普段地中で生息するクモたちが一斉に、糸を使って、高い場所に素早く避難したとみられる。

「普段目にすることのなかったクモたちが地上に出てきただけだ」

SNS上では巨大なクモの巣に引っかかった大量のクモに不安を抱く声も少なくないが、豪メルボルン博物館のケン・ウォルカー博士は「植生の下や落葉、樹皮の下、土の中で生息するため、私たちが普段目にすることのなかったクモたちが地上に出てきただけだ」と指摘

豪マッコーリー大学のリジー・ロウ博士も「大量のクモが避難し、一面クモの巣で覆われるという現象はギプスランドに限ったものではない。洪水の後には、豪州の他の地域や世界中でみられる」と解説する。

これらのクモには有毒な種はおらず、ウォルカー博士は「ヒトが噛まれたとしても軽度の局所刺激をもたらす程度で危険ではない」と話す。また、クモは害虫駆除に大きな役割を果たす生物だ。そのため、ロウ博士は「これらのクモを殺虫剤で駆除してはならない」と呼びかけている

クモは、浸水が解消されれば、すぐに元の生息地へ戻っていく。毛布のように広がった蜘蛛の巣も、細い糸で紡がれているため、風が吹けば壊れてやがて消える。地元では、住民が写真撮影に訪れるなど、年に1回あるかどうかの珍しい現象を楽しむ姿もみられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「同意しない者はFRB議長にせず」、就任

ワールド

イスラエルのガザ再入植計画、国防相が示唆後に否定

ワールド

トランプ政権、亡命申請無効化を模索 「第三国送還可

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中