最新記事

幼児教育

将来の理数系能力を左右する「幼児期に習得させたい」5つのスキル

Five Math Skills for Kindergarten

2021年6月8日(火)11時19分
スーザン・ソネンシャイン(メリーランド大学ボルティモア校応用発達心理学教授)、レベッカ・ダウリング(同大学博士課程)、シャリ・レニー・メッツガー(プリンスジョージズ・コミュニティカレッジ研究アナリスト)
子供の数学教育(イメージ)

遊びやお手伝い、散歩や買い物など日々の生活を通じて親は学びの機会をたくさん提供できる REAL444/ISTOCKPHOTO

<将来の学習に向けてしっかりした土台を築くために、早い段階で子供と一緒に取り組んでおきたい日常生活の工夫は>

早期の算数教育で親が果たす役割は非常に大きい。学習の役に立つおもちゃやゲームを与えることにとどまらず、日々の生活の中で算数を活用し、子供にお手本を示すことも重要だ。

親が算数を活用しているのを見て育った子供は、自らもよく算数を用いる。そうした活動が早い段階で算数のスキルを育み、それが将来の発展的な学習の土台になる。

子供が4歳くらいまでに身に付けさせたい算数のスキルが5つある。これらのスキルを学ぶ機会は、日常生活の中の至る所に転がっている。シンプルで楽しい活動を通じて、子供が算数のスキルを学ぶよう促そう。

1. 数を数える

4歳くらいまでにこのスキルを学びたい。具体的には、20までの数を数えられる、数字が記されたカードを数の順に並べられる、数え上げなくても物の個数を言える、物の並べ方が変わっても個数が変わるわけではないと理解できる、個数を数え上げたときは最後に言った数字が全体の個数を示していることを理解できる、といったことが目標になる。

このスキルは、日々の生活の中で学習しやすい。おもちゃを片付けるときに数を数えたり、キッチンから子供部屋までの歩数を数えたりしてもいい。時計やスマートフォンに表示されている数字を親が読み上げるのも有効な方法だ。

スーパーマーケットで目に入った数字を言わせたり、ドライブ中にほかの車のナンバープレートの数字を読ませたり、対向車線を走る車の台数を数えさせたりしてもいいだろう。子供が数え終わったら、「いくつだった?」と尋ねよう。

2. 足し算と引き算

形のある物を使って初歩的な足し算と引き算ができるようにしたい。このスキルも生活の中で学べる。例えば、夕食の準備をする手伝いをさせて、指示したとおりの数のお皿やスプーンを持ってこさせてもいいだろう。そのとき、算数の用語を使って子供と話すことが重要だ。「あといくつのお皿が必要だと思う?」などと尋ねよう。

遊びの時間も学習の機会になり得る。車のおもちゃで遊んでいるなら、「パパの(ママの)車を1台あげよう。そうしたら、車は全部で何台になったの?」と尋ねればいい。数字を数える歌やリズム遊びも効果的だ。

3. 10進法

「10」が10個の「1」で構成されることを学びたい。1~10の数字を理解するためには、手や足の指を活用するといい。

子供に10進法を学ばせるには、コインも役に立つ。小銭を用意してお店屋さんごっこをし、いろいろな金額のおもちゃを「購入」させよう。いくらのお金でいくつのおもちゃが買えるのかを話し合うのもいい。

4. 計測とデータ処理

さまざまな物を形や色や大きさに基づいて分類したり、同じカテゴリーに分類されている物に共通する特徴を言い当てたりできるようにしたい。大きい物から小さい物へ順番に並べるなど、特定の計測基準に基づいて物に順序づけができるスキルも身に付けたい。

キッチンで計量カップやスプーンを使って実際に計測するのもいい経験になる。食器や洗濯物やおもちゃを片付ける活動を通じて、物の分類の仕方を学ぶこともできる。

数や長さや重さなどを比較するスキルも学びたい。親が比較の言葉を会話で用いれば、子供の理解を促せる。手伝いをさせているときに「大きいほうのボウルを取ってちょうだい」「小さいほうのフォークをテーブルに並べて」などと言えばいい。

5. 図形

円や正方形や三角形などの2次元の図形を識別できるようにしたい。3次元の図形は、「箱」や「ボール」といった日常語で理解できれば十分だ。

こうしたスキルを身に付けさせるために、身の回りにあるさまざまな図形に注意を向けさせよう。散歩しているときに、車輪が円形であることを指摘し、ほかにも円形の物があるか探させてもいい。パズルや積み木も、子供に図形への理解を深めさせる有効な手段になる。

以上のような活動を通じて、あなたの子供が楽しみながら算数学習の土台を築く手助けをしてみてほしい

The Conversation

Susan Sonnenschein, Professor, Applied Development Psychology, University of Maryland, Baltimore County; Rebecca Dowling, Doctoral Student in Applied Developmental Psychology, University of Maryland, Baltimore County, and Shari Renee Metzger, Research Analyst, Prince George's Community College

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ドイツ商工会議所、今年の経済成長ゼロと予想 来年0

ビジネス

日産、通期の純損益予想の開示を再び見送り

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、9月は前月比+1.3% 予想を大

ビジネス

訂正-独コメルツ銀、第3四半期は予想に反して7.9
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中