最新記事

育児

立ち直る力を持つ「強い子供」に育てる、正しい失敗のさせ方とは

How to Build Your Kids’ Resilience

2021年6月4日(金)11時43分
マンディー・シェイン(豪エディスコーワン大学教育学部講師)
自転車で転ぶ子供(イメージ)

yaoinlove-iStock

<親としては子供に失敗させたくないと思ってしまうものだが、それでは失敗の経験から学ぶ機会を奪うことになる>

子供たちの繊細な自尊心を傷つけないために、彼らを失敗から守ってやろう――最近ではそんな風潮が強い。これは一見すると、理にかなっているようだ。失敗は嫌なものだし、格好悪いし、失望を味わう上にまた最初からやり直さなければならなくなる。

だが、子供たちを失敗から守ることは大きな逆効果をもたらす。それまで以上に困難に対処できなくなってしまうのだ。問題は、子供を守ろうとして彼らから学びの機会を奪ってしまうこと。失敗は、他の方法では決して得られない恩恵をもたらしてくれる。子供を見守り、失敗から上手に学ばせるために親がすべきことは......。

■失敗で落ち込むことは問題ないと教える

失敗すると、失望や挫折を味わうもの。だがこうした感情から守られた子供は、自分が無力で何もできないと考えるようになる。

本当に必要なのは、失敗を避けるのではなく小さな失敗への対処法を学んでいくことだ。日々のちょっとした挑戦は、子供の立ち直り力を鍛え上げるチャンス。彼らは失敗してネガティブな感情を味わっても前に進み、次は違うやり方を試すようになるだろう。

■失敗体験を成長と学習の機会にする

失敗がもたらす最大の利点は、自分の決断に対する当然の結果を学べること。「Xをしたら、Yが起こる」「勉強をしないと、落第する」「練習をしなければ、選手になれない」など至ってシンプルな概念だ。

こうした結果を経験させることで、子供たちに決断する力を付けてやれる。数々の研究によれば、子供時代に失敗から守られた人ほど、成人後に落ち込みがちで人生への満足度が低いことが分かっている。

■小さな失敗とその結果に対処させる

失敗は学習の基礎だ。新しいことを経験して能力を伸ばすとき、失敗は避けて通れない。失敗は「無能の証しで、避けるべきもの」と考えていては、挑戦まで避けるようになる。

心の成熟した子供は、知性とは鍛えられるし、努力で変えられるものだと考える。反対に、凝り固まった考え方の子供は、人の能力は生まれつき決まっていると信じている。だからこそ、心が成熟した子供は、失敗とはさらなる挑戦と新たな方法を試すためのきっかけだと考える。凝り固まった子供は、失敗は愚かさの証しだと考える。

■個性より努力を褒める

失敗で傷ついた子供の心を埋めてあげるために、褒め言葉を掛けるのはよくあること。だが大げさな褒め方はかえって逆効果になることが、研究で示されている。両親が過剰に褒めたり(「ものすごく上手にできたね」)、個性に焦点を当てた褒め方をしたりすると(「あなたってかわいい子ね」「頭がいいね」「特別な子だ」)、子供の自尊心は低下する。

個性を重視した褒め方を続けていると、子供は達成感や自尊心を育むために必要な、失敗や挑戦を避けるようになる。努力ではなく、子供「そのもの」を褒めているからだ。

両親は、「一生懸命頑張ったね」などと努力を褒める言葉を掛けたほうがいい。子供は自分の賢さや美しさを変えることはできないが、努力の度合いは自力で変えられる。

The Conversation

Mandie Shean, Lecturer, School of Education, Edith Cowan University

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米USTR、新たな301条調査開始へ 主要国の大半

ワールド

トランプ氏、10%の代替関税に署名 最高裁の違憲判

ワールド

トランプ氏、10%の代替関税に署名 最高裁の違憲判

ワールド

アングル:米相互関税に違憲判決、世界経済の先行き依
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 4
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 5
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 6
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 7
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 8
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 9
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中