最新記事

ワクチン

ワクチン血栓の原因解明か アストラ/ジョンソン製改良へ手掛かり 独研究

2021年6月2日(水)18時45分
青葉やまと

一方、血栓の報告が目立たないファイザー製およびモデルナ製ワクチンは、どちらもmRNAワクチンだ。これらは細胞質内に直接mRNAを送り込むしくみになっているため、細胞核内での転写作業とスプライシングを必要とせず、エラーの余地がない。マーシャレック教授たちの説は、mRNAワクチンで血栓症の報告が見られない点とも符合するものだ。

研究チームは現在J&J社とコンタクトを取っている

本研究は第三者による査読を受ける前の状態だが、早くも複数の海外メディアが報じている。米ブルームバーグは、英ノッティンガム大学でウイルス学を研究するジョナサン・ボール教授のコメントとして、不完全なスパイクが生成され得ることが本研究によって十分に示されたとの見解を伝えている。現段階ではこのスパイクを血栓の原因と断定する確実な証拠がないとしながらも、さらに調査を進める価値が確実にある、と教授は述べている。

血栓の原因については、これまでも複数の可能性が示されてきた。英テレグラフ紙は既存の説として、ドイツのグライフスヴァルト大学病院による研究を伝えている。アストラゼネカ製ワクチンにはEDTAという防腐剤が含まれており、これが原因になっているという説だ。しかし、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンにEDTAが含まれていないことを考慮すると、今回の新説にはこれを上回る説得力がありそうだ。

研究を主導したマーシャレック教授はすでに、ワクチンの改良を念頭にジョンソン・エンド・ジョンソン社と連絡を取っている。教授によると、研究チームはスパイクたんぱく質の不正なスプライシングを防止するためのゲノムの変更方法を伝える用意があり、ジョンソン・エンド・ジョンソン側もワクチンの最適化に動いているという。アストラゼネカ社とはまだ話し合いの場を持っていないものの、同社への情報提供にも積極的な姿勢を教授は示している。

ベクターワクチンは比較的破損しにくいDNAを成分とするため、mRNAワクチンのように極低温の保管・運搬を必要としない利点がある。血栓を抑止できれば、より多くの人々が安心して接種を受けられる環境に一歩近づきそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱工業生産1月は前月比2.2%上昇、予想下回る 先

ワールド

アンソロピックCEO、AI軍事利用巡る米国防総省の

ビジネス

AIクラウドの米コアウィーブ、26年設備投資が倍増

ワールド

東京コアCPI、2月は+1.8% 制度要因で202
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 5
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    「3列目なのにガガ様が見えない...」観客の視界を遮…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中