ワクチン血栓の原因解明か アストラ/ジョンソン製改良へ手掛かり 独研究
一方、血栓の報告が目立たないファイザー製およびモデルナ製ワクチンは、どちらもmRNAワクチンだ。これらは細胞質内に直接mRNAを送り込むしくみになっているため、細胞核内での転写作業とスプライシングを必要とせず、エラーの余地がない。マーシャレック教授たちの説は、mRNAワクチンで血栓症の報告が見られない点とも符合するものだ。
研究チームは現在J&J社とコンタクトを取っている
本研究は第三者による査読を受ける前の状態だが、早くも複数の海外メディアが報じている。米ブルームバーグは、英ノッティンガム大学でウイルス学を研究するジョナサン・ボール教授のコメントとして、不完全なスパイクが生成され得ることが本研究によって十分に示されたとの見解を伝えている。現段階ではこのスパイクを血栓の原因と断定する確実な証拠がないとしながらも、さらに調査を進める価値が確実にある、と教授は述べている。
血栓の原因については、これまでも複数の可能性が示されてきた。英テレグラフ紙は既存の説として、ドイツのグライフスヴァルト大学病院による研究を伝えている。アストラゼネカ製ワクチンにはEDTAという防腐剤が含まれており、これが原因になっているという説だ。しかし、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンにEDTAが含まれていないことを考慮すると、今回の新説にはこれを上回る説得力がありそうだ。
研究を主導したマーシャレック教授はすでに、ワクチンの改良を念頭にジョンソン・エンド・ジョンソン社と連絡を取っている。教授によると、研究チームはスパイクたんぱく質の不正なスプライシングを防止するためのゲノムの変更方法を伝える用意があり、ジョンソン・エンド・ジョンソン側もワクチンの最適化に動いているという。アストラゼネカ社とはまだ話し合いの場を持っていないものの、同社への情報提供にも積極的な姿勢を教授は示している。
ベクターワクチンは比較的破損しにくいDNAを成分とするため、mRNAワクチンのように極低温の保管・運搬を必要としない利点がある。血栓を抑止できれば、より多くの人々が安心して接種を受けられる環境に一歩近づきそうだ。