最新記事

インド

病院がICUを放棄? 無人の部屋に死体のみ、訪ねた親族が発見 インド

2021年6月14日(月)18時20分
青葉やまと

放棄されたインドのICU? SNSで拡散されて話題に NDTV-YouTube

<訝しむ親族が私立病院のICUを訪ねると、医師も看護師もそこにはなく、遺体だけが残されていた>

現場となったのは、首都ニューデリー近郊に位置する私立病院のクリッティ・ホスピタルだ。スタッフのいない無人状態のICU(集中治療室)内部で患者たちが絶命しており、この様子を収めた動画がインドを中心にSNSで拡散した。

動画は院内のICU前の通路で撮影されたもので、怒りに燃える親族たちの様子を確認できる。患者の親族たちがICUに詰め掛けるが、扉は固く施錠されている。ガラス越しに室内を覗くと、なかには医者の姿も看護師の姿も見られない。

続いて彼らは扉をこじ開け、内部へと侵入した。ICU内で撮影された映像からは、ベッドの上で事切れた遺体を確認できる。遺体は全部で3体あり、ICU以外の病棟で死亡した患者も含めると計6名に上る。

患者の親族たちはICUに一切のスタッフがいないことを悟ると、院内に医師の姿を求めた。動画では、撮影者がカメラを回しながらロビーに戻り、「ここにも医者はいない、薬剤師も...受付はもぬけの殻。警備員さえもいない」と語気荒く語る様子を確認できる。撮影者はナースステーションや病室にも無断で立ち入るが、関係者の姿はほぼ見られない。

ほかの親族たちもみな怒り心頭の様子だ。口々に怒鳴りながらスタッフを探し、院内を歩き回る。現場に駆けつけた警察官に「医者たちがこうして逃亡するようなことがなぜ許されるのか」と詰め掛ける男たちの姿も見られた。

動画はSNSで拡散されて話題となり、5月になって各種メディアにも取り上げられるようになった。デリーに拠点を置くニュースメディア『NDTV』は、「背筋も凍るこの動画では、ICUのベッドに微動だにせず横たわる患者たちをカメラが捉え、画面外からは『死んでいる、死んでいる...』という声が聞こえる」と動画の内容を報じている。

Videos Show Locked ICU, Dead Bodies Within, Staff In Hiding


酸素不足の悲劇が繰り返されていた

インドでは重傷者の急増に伴い医療用酸素の供給体制がひっ迫し、酸素不足で命を落とす患者が相次いでいる。計6名が死亡した本件も、酸素不足が原因だ。インディア・トゥデイ紙によると病院関係者は、医療用酸素の供給不足を十分に受けられなかったことが原因だったと説明している。

NDTVの詳報によると、当日午後2時の時点で政府側から病院に対し、酸素の在庫が尽きたとの連絡が入ったという。午後4時ごろに病院側は患者の親族に連絡し、酸素の供給不足を乗り切るためにICUに収容すると伝えた。しかし、追加の酸素の確保が間に合わず、午後11時ごろには6名の患者たちが続々と息を引き取る事態となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中