コロナで親を失った子供たち 苦しむ家族を看取り、孤立し、人身売買の被害者に(インド)
INDIA’S NEW COVID ORPHANS
目の前で親が死ぬのを見た子供もいると、ボランティアとして児童権利保護委員会で活動している人物は指摘する。病床が不足していて入院できず、人工呼吸器も利用できないまま、苦しんで死んでいく親の姿を目の当たりにした子供たちが少なからずいるのだ。
そのような経験をした子供たちは情緒面で非常にもろい状態にあり、カウンセリングを行う場合は細心の注意を払う必要があると、このボランティアの人物は言う。子供との会話で過去の過酷な経験を話題にすると、つらい記憶がよみがえってしまうからだ。
コロナ禍で親を亡くした子供たちは、ほかの理由で親と死別する場合とは異なる独特の試練に直面する場合がある──そう指摘するのは、インドの児童心理学者ブハブナ・バルミだ。コロナ禍に特有の社会的孤立や経済的苦境により、誰も自分を助けてくれないという思いを強くしかねないというのだ。
「私たちがまずできるのは、先手を打って全ての子供を既存の支援制度に結び付けること」だと、バルミは語る。「生活保護や遺児年金など、子供たちが受給できる制度の利用を後押しすべきだ。加えて政府は、親を亡くした子供全員を洗い出し、カウンセリングを行い、有益な資源を提供する必要がある。その重要性は極めて大きい。親を亡くした子供たちは、深刻な精神的ダメージを被っているのだから」
孤児が人身売買の標的に
コロナ禍で親を亡くした子供にお悔やみの言葉を伝えることも避けるべきだと、バルミは言う。それよりも、親がいた頃の家庭と似た環境で過ごせるよう配慮すべきだという。
「そうすれば、子供たちは喪失感を抱かずに済む。それに、子供らしい興味の対象を追求する機会を与えることは、精神が沈むような経験を乗り越える上でも効果がある」
前出のクンドゥによれば、ソーシャルメディアには、親を亡くした子供を養子にしてほしいという趣旨の書き込みがあふれている。
しかし「そのような行為は完全に違法だ」と、クンドゥは警鐘を鳴らす。「子供たちを人身売買の被害者にしかねない」。ソーシャルメディアに書き込む人たちは善意で行動しているのかもしれないが、子供たちを危険にさらす恐れがあるのだ。
「養子縁組をしようとする人物に対しては、政府機関による身元調査が不可欠だ。養子縁組をオンラインビジネスと同じように考えてはならない」と、クンドゥは言う。