最新記事

考古学

死海文書に2人目の書き手、AIが見破る 筆跡から筋肉の運動を解析

2021年5月6日(木)17時30分
青葉やまと

イスラエル博物館の聖書館に展示されている死海文書のレプリカ REUTERS/Baz Ratner

<AIを用いた解析により、これまで一人の書き手による文書だと考えられてきた死海文書の巻物に、もう一人の筆記者の存在が浮かび上がった>

ある羊飼いの少年が1947年、死海の北西岸にあるクムラン洞窟で、古い壺を発見した。なかから出てきた巻物は、のちに一帯で出土した数々の断片とともに死海文書と名付けられ、その存在が公表されると瞬く間に世界中の興味の的となった。

一連の文書は紀元前250年から紀元70年ごろまでに書かれたとされ、その内容は旧約聖書正典の写本のほか、外典および偽典、そしてクムラン教団の規則を記した教団文書などで構成される。外典とは正典に編入されなかった文書を指し、偽典はさらに外典からも除外された文書を意味する。

1956年までにかけて計3万点前後の断片が発見されたほか、今年3月には約60年ぶりに新たな断片が発見され、大きな話題を呼んだ。これほど注目を集めている死海文書だが、発見から70年以上を経てなお、その製作者は謎に包まれたままだ。写本を行った人物あるいは集団は、彼ら自身に関する記述を死海文書中に一切残していない。

洞窟近くの遺跡で集団生活を送っていたクムラン教団による写本であると見られるが、教団については古代ユダヤ教のエッセネ派とする説とそれを否定する材料が入り乱れており、真相はいまも謎のベールに包まれたままだ。

そんな謎に満ちた死海文書の書き手をめぐる発見が、このたびAIの機械学習などの助けを借りて実現した。

7メートルに及ぶ貴重なイザヤ書を分析した

研究を主導したのは、オランダのフローニンゲン大学でヘブライ聖書と古代ユダヤ教を研究しているムラデン・ポポヴィッチ博士だ。研究論文が学術誌『プロス・ワン』上にこのほど掲載された。

ポポヴィッチ博士らチームは、クムラン洞窟で最初に発見された7つの巻物の一つである『イザヤ書』に注目した。ほぼ完全な状態で見つかった数少ない死海文書であり、その全長は7メートルに及ぶ。

RTR2RV2N.jpgREUTERS/Baz Ratner

巻物は全54段から成り、ちょうど半分の27段目と28段目のあいだで2つの紙片を縫い合わせた跡がある。2人の筆記者による製作物をここで縫い合わせたという見方も少数ながらあったが、筆跡が双方でほぼ同一であることから、これまでは単一の書き手による写本であるとの見方が有力だった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

豪首相、戦争の経済ショックは数カ月継続と警告 公共

ワールド

ユーロ圏はすでに逆境、インフレ波及22年よりも急速

ワールド

再送-〔焦点〕テック銘柄の「安全資産」神話揺らぐ、

ワールド

アングル:緊迫のホルムズ海峡、インドLPG船は別航
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 5
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 6
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中