最新記事

ワクチン

ドイツとフランスで、ワクチンの代わりに生理食塩水を注射して問題に

2021年4月28日(水)17時30分
冠ゆき

ワクチンへの疑心暗鬼を生じさせた...... REUTERS/Hannibal Hanschke

<ドイツとフランスで、新型コロナウイルスワクチンの代わりに、生理食塩液を注射し、ワクチンへの疑心暗鬼を生じさせるなど問題を引き起こしている...... >

ドイツとフランスで、新型コロナウイルスワクチンの代わりに生理食塩液を注射する事態が相次いで起こった。

中身のこぼれた瓶に生理食塩液を入れてごまかした

4月21日、ドイツ北部ニーダーザクセン州のフリースラントでは、看護婦の一人が6人のワクチン接種希望者に生理食塩液を注射した。シリンジの準備中に、この看護婦はファイザーワクチンのバイアル(瓶)を落としてしまい、それをごまかすために、ワクチンの入っていない生理食塩液だけのシリンジを準備。それが合計6人に注射された。後日当人がこれを同僚に告白したことでこの事実が発覚。その同僚の知らせにより、続く週末、警察が調査に乗り出した。

本物のワクチンを接種できなかったのは6人だけだが、その日接種を受けた200人のうち誰がその6人なのかが不明だ。これを免疫検査で突き止める必要があるため、同センターは、この日ワクチン接種に来た全員に名乗り出るよう呼び掛けている。

フリースラントの責任者アンブロシー氏は、この「ごまかし操作」にショックを受け、速やかに再発防止対策を発表した。今後、当局はワクチン接種センターに「4つの目」ルールを導入し、ワクチン準備を一人で行うことがないようにするという(RTL 5minutes)。

フランスでは、ワクチンへの疑心暗鬼を生じさせている

また、フランスでは4月20日、マルヌ県のエペルネで、約140人が生理食塩液を注射されたことが判明した。もともとファイザー社のワクチンは、生理食塩液で希釈して接種することになっている。そのため、準備段階で「ミス」が生じたものと考えられているが、「ミスの詳細」についてはいまだ公表されていない。

幸い、生理食塩液は健康に害をもたらすものではない。だがワクチン効果は当然望めないため、ワクチンセンターは改めて140人に連絡をとり、23日と28日に分けてワクチン接種をやりなおした(フランス・アンフォ) 。

この「ミス」報道は、ただでさえワクチンに懐疑的なフランス人に、さらなる疑心暗鬼を生じさせた。

ラ・デペシュ・デュ・ミディ紙サイトやル・ポワン誌サイトに寄せられたコメントの大半は、「理解しがたい間違い」という批判の声だ。

容器にも容量にも名前にも共通点がないのに、どうやったら間違えられるんだという意見。次に目につくのが、「大臣用のシリンジだったに違いない」と皮肉る声だ。フランスでは、国民のワクチンに対する不信感を取り除くため、ヴェラン厚生相やカステックス首相はメディアの前でワクチン接種を受けた。それを引き合いに出して、あれはワクチンじゃなく生理食塩液でのパフォーマンスだったんだと、皮肉めかしてコメントしている。

また、ワクチン接種したのに副反応がなかったという人からは「もしかすると、自分が受けたのもただの食塩水だったのでは」と疑う声も寄せられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:AI導入でも揺らがぬ仕事を、学位より配管

ワールド

アングル:シンガポールの中国人富裕層に変化、「見せ

ワールド

チョルノービリ原発の外部シェルター、ドローン攻撃で

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中