最新記事

日本経済

日本の人手不足の背景にある「即戦力の人を採れない」事情

2021年4月28日(水)10時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

人手不足の程度は業界によっても異なる。常用労働者という括りは大きいので、正社員とパートに分けてみてみる。<図2>は横軸に正社員、縦軸にパートの過不足DIをとった座標上に、12の産業のドットを配置したグラフだ。2020年はコロナ禍の影響があるので、2019年のデータを使っている。

data210428-chart02.png

右下にあるのは、正社員の不足が著しい産業だ。情報通信や建設はこのゾーンにある。人は欲しいが、相応のスキルのある人でないと困る。建設業なら重機が操れる人が欲しいが、そういう「求める人がこない」タイプだ。

左上はパート労働者の不足にあえいでいる産業で、飲食や小売業などが該当する。資格やスキルがなくてもこなせるが、「人がこない」タイプだ。最近では、これらの産業のパートには外国人も増えている。運輸・郵便や医療・福祉は、正社員とパートの双方が不足している。超高齢社会を支える運転手、看護師、介護士の不足はよく指摘される。

正社員とパートの過不足DIを全産業で見ると、近年では前者の方が高い。人手不足は、ただ人がこないというだけでなく、即戦力となる人を採れない問題でもあり、教育の職業的レリバンス(関連性)の強化が求められる。高等学校の工業科や福祉科の拡充などはそれで、今ではこれらの学科の正社員就職率は非常に高い。

だが時代の要請に即応する知識やスキルほど、状況の変化に弱い面もある。産業界から歓迎される即戦力と同時に、汎用性の高い一般知識やスキルも身に付けさせ、また時代の変化に応じて自身の能力を更新していく態度も育まないといけない。変動が激しい社会では、大人の学び直し(リカレント教育)を受け入れる制度をつくることも求められる。

<資料:厚労省『労働経済動向調査』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸、米早期利下げの思惑が支援 ハイテク

ワールド

高市首相、放漫財政を否定 為替は「状況見て必要な手

ワールド

マクロスコープ:米中接近で揺れる高市外交、「こんな

ビジネス

英中銀のQT、国債利回りを想定以上に押し上げ=経済
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中