最新記事

バイデン増税

キャピタルゲイン増税案をめぐるウォール街と米政府の攻防

2021年4月27日(火)18時23分
ジェンキンス沙智(在米ジャーナリスト)
バイデン米大統領

バイデンは28日、上下両院合同会議で行う就任後初の演説で増税案を発表する予定 Jonathan Ernst-REUTERS

<バイデン大統領は富裕層に対するキャピタルゲイン税率の倍増を提案へ。一部州では税率が50%を超える可能性も>

米国市場ではここ数日、バイデン大統領が今週打ち出す見込みのキャピタルゲイン(資産売却益)増税案が話題の中心となっている。

報じられたところによると、バイデン大統領は育児や教育支援などを柱とする新たな経済対策「米国家族計画」の財源として、年間所得が100万ドルを超える富裕層のキャピタルゲイン税率を現行の20%から39.6%に引き上げることを提案する。

一定以上の所得に課せられる純投資所得税(NIIT)の3.8%を上乗せすると合計税率は43.4%に上るほか、独自のキャピタルゲイン税を設けているニューヨーク市やカリフォルニア州では合計税率が50%を超える可能性がある。

米政府は異例の反撃に

当初の報道を受けてS&P500株価指数は1ヵ月以上ぶりの下げ幅を記録し、改善基調にある米経済成長への打撃に対する懸念から米国債利回りも低下した。市場の動揺は長続きせず、翌日には株価が反発したものの、今週に入ってもこの増税案に連日噛み付いているのがウォール街やシリコンバレーの機関投資家らだ。

著名ベンチャーキャピタリストのティム・ドレイパー氏はツイッターで「43.4%のキャピタルゲイン税は米国/シリコンバレーという金の卵を産むガチョウを殺すことになりかねない」と非難し、「50%を超えれば雇用創出の死を意味する」と畳み掛けた。

さらにその後のCNBCとのインタビューでも、韓国と北朝鮮の経済格差を例に挙げ、社会主義的な政策は生産性を悪化させて経済を毀損すると主張。増税は人々のやる気を奪うとしたうえで、「偉業を成し遂げるには自由が必要だ」と持論を展開した。

このほか、資産運用大手グッゲンハイム・パートナーズの最高投資責任者、スコット・マイナード氏はフィナンシャル・タイムズに対し、バイデン氏の提案は「おそらく税収の経時的な減少につながり、長期投資に資金を回す意欲を削ぐことになる」と危惧した。

こうした批判を受けて、ホワイトハウスは26日、まだ増税案が正式に発表されていないにもかかわらず異例の反撃に出た。ジェン・サキ大統領報道官は26日の定例記者会見に米国家経済会議(NEC)のブライアン・ディーズ委員長を招き入れ、バイデン大統領が年間所得100万ドルを超える納税者を対象にキャピタルゲイン増税案を打ち出す方針を確認した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有

ビジネス

FOMCが焦点、0.25%利下げ見込みも反対票に注

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使らと電話会談 「誠実に協力し

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中