韓国、学生は原発処理水放出に断髪で抗議、専門機関は「科学的に問題ない」
韓国の専門機関は問題ないという立場
韓国政府や自治体、市民団体などが、処理水を汚染水と呼んで放出に反対する一方、韓国の専門機関は科学的に問題ないという立場だ。
韓国科学技術院のチョン・ヨンフン教授はメディアの取材に対し、日本政府が公表した放出地点の処理水のトリチウム濃度は基準値より低く、一般人の年間被ばく線量基準値である1ミリシーベルトを下回るとし、危険性を強調するのではなく、日本が公開した情報が事実と符合するかどうか確認すればよいと主張した。
韓国の原子力安全委員会も昨年10月、汚染水を浄化する日本の多核種除去設備(ALPS)の性能に問題はなく、韓国の海域に到達しても拡散・希釈されるので影響はないという報告書を作成していた。同委員会は、国際原子力機関(IAEA)の調査や検証への参加を図る方針だ。
外交部は文大統領の指示を受けて、国際海洋法裁判所への提訴を検討するが、これまでにも同裁判所への提訴を検討したことがあり、効果は乏しいという判断を下している。
韓国内の原発で問題を抱える
福島原発に過剰な反応を見せてきた韓国だが、自国内でも問題を抱えている。韓国水力原子力(韓水原)が2016~19年に行なった調査で、10基の原発から777か所の鉄板腐食が発見され、8基の原発から295か所の隙間が発見された。
20年10月には韓国監査院が月城原子力発電所1号機の早期閉鎖に関する監査を実施した際、産業通商資源部の職員が証拠を隠滅していたことが明らかになっている。
月城原発1号機は、1982年に稼働を開始した韓国2番目の原子力発電所で、原子力安全委員会が産業通商資源部の提出資料を基に早期閉鎖を決定したが、同部が脱原発を宣言した文在寅大統領の意向に沿った評価を行っていた可能性が浮上した。
韓国監査院が監査を実施した前日夜、同部の職員が444件のコンピューターファイル名を変更、削除するなど「証拠隠滅」を図っていたことが判明した。
地下水の汚染も深刻だ。19年10月、飲料用地下水76か所から基準値を超えるウランが検出され、最大で基準値の157倍に達していた。07年にも世界保健機構(WHO)勧告値の109倍のウランが検出されて環境部が、地下水の飲料を禁止したが、汚染の可能性の浮上したのは03年で、4年間も放置されていたのだ。
処理水の海洋放出は、100%安全とは言い切れないが、避けることができない有効な手段だろう。IAEAは一連の作業をモニタリングする国際調査団に韓国の専門家の参加を望む考えを示している。反対のための反対ではなく、前向きな姿勢でIAEAに参加できれば、自国の安全策を講じる上でもプラスに作用するかもしれない。