最新記事

気候変動

「日米蜜月」の陰で米中が気候変動対策で協力

US, China To Cooperate On Climate Crisis

2021年4月19日(月)16時14分
メーガン・マニング
バイデン政権の気候変動問題担当として訪中したケリー特使

バイデン政権の気候変動問題担当として訪中したケリー特使 Kevin Lamarque-REUTERS

<排出量では世界ワースト1位と2位。何かと対立が目立つ両国が手を組む>

温室効果ガスの2大排出国であるアメリカと中国は4月18日、気候変動対策で協力していくとする共同声明を発表した。

ちょうど日本の菅義偉首相が訪米してアメリカのジョー・バイデン大統領と「親交」を深め、安全保障や人権問題で中国を非難していた頃、バイデン政権の気候変動問題担当のジョン・ケリー米特使と中国の解振華(シエ・チェンホア)特使が15〜16日に上海で行った会談を受けてのもの。今月22日からは、バイデン主催の気候変動サミットがオンライン方式で開催される予定だ。

共同声明で両国政府は「アメリカと中国は互いに、そして他の国々とも協力して気候危機への対策に取り組んでいく。気候危機には真剣かつ早急な対応が必要だ」と述べた。

会談では両国がともに排出量を削減することや、低炭素エネルギーへの転換に向けて発展途上国を資金面で支援することで合意。温室効果ガスの排出削減により、世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑えることも目標とされた。

2016年、世界の温室効果ガスの総排出量に占める割合は中国が最も多く26%で、アメリカは第2位で13%。第3位はEUで7.8%、第4位はインドで6.7%だった。

環境団体グリーンピース中国の李碩(リー・シュオ)は、両国間の努力を心強く思うと語った。

「(気候変動対策に関して米中が)協力していくという非常に明確なメッセージが打ち出された。上海での(両国特使の)会談以前には想定できなかったメッセージだ」と李はロイター通信に述べた。

両国ともに掲げる目標は意欲的

気候変動サミットには世界の40人の首脳が招待されている。参加国からは排出削減に向けたさらなる計画が発表される他、途上国への資金援助の表明が行われると見込まれている。

アメリカはバイデン大統領の就任初日に地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定に復帰。バイデンは電気自動車業界の振興のため1740億ドルを、電力網の刷新のために1000億ドルを投じる計画を明らかにしたばかりだ。

またバイデンは、2014年以内に電力セクターの温室効果ガス排出をゼロにし、2050年には温室効果ガスの排出の実質ゼロを達成するとの目標を打ち出している。

また、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は昨年9月、2060年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると述べている。

世界各国の首脳は、気候変動問題へのさらなる真剣な取り組みが求められている。世界資源研究所によれば、世界の年間温室効果ガス排出量は1990年と比べて41%も増加している。

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権がロス市提訴、ICE業務執行への協力制限策に

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック最高値更新、貿易交

ワールド

G7外相、イスラエル・イラン停戦支持 核合意再交渉

ワールド

マスク氏、トランプ氏の歳出法案を再度非難 「新政党
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 8
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 9
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中