最新記事

ワクチン

ワクチン・パスポート、英国では導入に前向き、米国では分断促す懸念も

2021年4月9日(金)18時30分
松丸さとみ

英国政府も、ワクチン・パスポートの導入に前向きだ。英国も現在は行動が制限されており、海外旅行は基本的にできない。しかしスポーツ観戦やコンサートなど、人が集まる場所への対策として、ワクチン・パスポートが有効になるのではないかと考えられているという。

英ニュース・チャンネル、スカイニュースの4月6日付の記事によると、今後2週間以内に、大規模なイベントで試験的にワクチン・パスポートが導入される予定だ。4月18日にロンドンのウェンブリーで行われるサッカーFAカップ準決勝レスター・シティ対サウサンプトンの試合や、5月15日のFAカップ決勝戦などが対象に含まれている。

米国では政治分断の象徴に?

一方で、慎重なのが米国だ。ホワイトハウス報道官のジェン・サキ氏は6日の記者会見で、ワクチン・パスポートや、連邦レベルでワクチン接種を管理するデータベースを導入する予定はないと明言した。プライバシーや権利の保護を理由に挙げた上で、ワクチンの証明書は、民間組織や非営利団体が行うべきだとの考えを示した。

州レベルでは、ワクチン・パスポートについてそれぞれの動きを始めている。ニューヨーク州では独自のワクチン・パスポート「エクセルシオール・パス」を導入した。スマートフォンのアプリ形式の証明書で利用は任意だが、同州はこのパスにより、スポーツイベントや劇場などを再開できるとしている。

一方でテキサス州は、同州の機関や公的資金を受けている民間組織が、ワクチン・パスポートを作ったり、サービス利用者にワクチン接種の証明を求めたりすることを禁止した。政治的に中立な地元メディア、テキサス・トリビューンによると、ワクチン・パスポートの導入はここのところ、政治的な議論になっており、個人の自由やプライバシーの侵害を理由に、主に共和党支持者が反対していると報じている(テキサスのグレッグ・アボット知事は共和党)。

ニューヨーク・タイムズ紙も、マスクを着用するか否かが政治的なスタンスの表明に使われたように、ワクチン・パスポートも政治的な意味合いを帯びるようになるとみている。さらに、ワクチン接種は世界的に見て富裕国で進んでおり、欧米では、白人コミュニティや富裕層で進んでいると指摘。こうしたことから、ワクチン接種の有無が、政治的・社会的な分断を広げる「火種」になると警告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、ハイテク株に売り エヌビディア

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで上昇、介入警戒続く 日銀

ワールド

トランプ氏「怒り」、ウ軍がプーチン氏公邸攻撃試みと

ワールド

トランプ氏、ガザ停戦「第2段階」移行望む イスラエ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中