ワクチン・パスポート、英国では導入に前向き、米国では分断促す懸念も
英国政府も、ワクチン・パスポートの導入に前向きだ。英国も現在は行動が制限されており、海外旅行は基本的にできない。しかしスポーツ観戦やコンサートなど、人が集まる場所への対策として、ワクチン・パスポートが有効になるのではないかと考えられているという。
英ニュース・チャンネル、スカイニュースの4月6日付の記事によると、今後2週間以内に、大規模なイベントで試験的にワクチン・パスポートが導入される予定だ。4月18日にロンドンのウェンブリーで行われるサッカーFAカップ準決勝レスター・シティ対サウサンプトンの試合や、5月15日のFAカップ決勝戦などが対象に含まれている。
米国では政治分断の象徴に?
一方で、慎重なのが米国だ。ホワイトハウス報道官のジェン・サキ氏は6日の記者会見で、ワクチン・パスポートや、連邦レベルでワクチン接種を管理するデータベースを導入する予定はないと明言した。プライバシーや権利の保護を理由に挙げた上で、ワクチンの証明書は、民間組織や非営利団体が行うべきだとの考えを示した。
州レベルでは、ワクチン・パスポートについてそれぞれの動きを始めている。ニューヨーク州では独自のワクチン・パスポート「エクセルシオール・パス」を導入した。スマートフォンのアプリ形式の証明書で利用は任意だが、同州はこのパスにより、スポーツイベントや劇場などを再開できるとしている。
一方でテキサス州は、同州の機関や公的資金を受けている民間組織が、ワクチン・パスポートを作ったり、サービス利用者にワクチン接種の証明を求めたりすることを禁止した。政治的に中立な地元メディア、テキサス・トリビューンによると、ワクチン・パスポートの導入はここのところ、政治的な議論になっており、個人の自由やプライバシーの侵害を理由に、主に共和党支持者が反対していると報じている(テキサスのグレッグ・アボット知事は共和党)。
米ニューヨーク・タイムズ紙も、マスクを着用するか否かが政治的なスタンスの表明に使われたように、ワクチン・パスポートも政治的な意味合いを帯びるようになるとみている。さらに、ワクチン接種は世界的に見て富裕国で進んでおり、欧米では、白人コミュニティや富裕層で進んでいると指摘。こうしたことから、ワクチン接種の有無が、政治的・社会的な分断を広げる「火種」になると警告している。