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北朝鮮「死刑囚の目がキョロキョロと...」北朝鮮の公開処刑「最前列」の目撃証言
日時が特定できた公開処刑は7件あった Danish Siddiqui
韓国のNGOである軍人権センターは先月30日、ソウルで開いた討論会で、北朝鮮軍の人権実態調査の結果を発表。調査に協力した脱北者30人のうち26.7%に当たる8人が軍服務中に公開処刑を目撃していたと明らかにした。
同センターは、2019年7月から2020年6月にかけて韓国に入国した脱北者のうち、軍服務経験のある30人を面接調査。また、北朝鮮軍の人権実態に関する文献も分析したという。ちなみに、日時が特定できた7件の公開処刑の執行時期は1990年代が3件、2000年代が3件、2010年代が1件だったという。
一方、同センターが同時に発表した報告書には、公開処刑を目撃した元軍人の生々しい証言も収録されている。たとえば、2008年に行われた公開処刑に関しては、次のような証言がある。
「事件が起きてひと月も立たずに銃殺を執行しました。それで、私たちが最前列に座らされて。軍人たちがいちばん前に座らされて(中略)実際、いちばん前で見たくはなかったのだけど(中略)近い距離からだから見えるじゃないですか。(死刑囚が)目を閉じたり開けたりして、生きているんです...(中略)眼だけはキョロキョロしているんです」
公開処刑は恐怖政治の一環であり、「見せしめ」のために行われる。そのため北朝鮮当局は、もっとも恐怖を与えたい人々に対し、公開処刑を最前列で見ることを強いるケースが珍しくない。
<参考記事: 女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー>
この処刑では、死刑囚が軍人だったため、軍人を最前列に座らせた。同様に、死刑囚が芸能人ならば、芸能人を最前列に並ばせるのだ。芸能人が処刑されたケースでも、同様に生々しい証言が伝えられている。
ところで、証言はともかく、上記のような数字を見てどう思うだろうか。日本の読者の一般的な感覚なら、これでも十分にショッキングかもしれない。だが、北朝鮮における人権侵害を継続的にウォッチしている立場から見ると、「意外と少ない」と感じるのが本当のところだ。
同センターは、兵士らの士気を考えて、軍内での公開処刑は控えめにされているのだと説明している。一理ある分析だ。だがそうした傾向も、その時々の情勢から大きな影響を受けるものであるように思える。たとえば昨年8月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の穏城(オンソン)郡では、国境警備で怠慢があったとの理由により、一度に5人もの軍人が処刑されたとの情報がある。
あるいはこうした一連のデータや情報は、金正日前政権の後期と比べ、2012年から本格的にスタートした金正恩政権の暴虐さが勝っていることを示唆しているのかもしれない。
<参考記事: 北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...>
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。