最新記事

中国

中国を礼賛し、民主化運動を妨害する欧米の若者たち「タンキー」が増殖中

Activists vs. Tankies

2021年4月7日(水)16時38分
セバスチャン・スコウ・アンデルセン、トーマス・チャン
中国旗と香港旗を持つ親中派の香港人

中国の国旗と香港旗を掲げる香港の親中派。だが親中派は西洋にもいる CHAN LONG HEIーSOPA IMAGESーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES

<共産主義を支持する極左勢力が欧米に台頭。中国政府の人権侵害を認めず、中国モデルを称賛する彼らを懸念する声も広がるが>

天安門広場に集結した中国の民主化を求める若者たち多数を蹴散らし惨殺した後、隊列を組んで引き揚げる戦車の前に、丸腰で立ちはだかった1人の男がいた。素性も生死も不明だが、欧米メディアは彼を「タンク(戦車)マン」と呼び、その勇気を絶賛したものだ。

そう、30余年前の彼の行為は間違いなく命懸けだった。しかし今は民主化を求める中国人の若者が、およそ命懸けではない西洋のタンキー(タンク野郎)たちとオンラインで火花を散らしている。

現代のタンキーは欧米の若者たちで、共産主義の独裁政権を支持している。だから新疆ウイグル自治区などで中国政府が行っている露骨な人権侵害や弾圧の事実も、いくら確固とした証拠があっても認めない。そしてマルクス・レーニン主義者を自称し、アメリカの帝国主義と外国(とりわけ社会主義国)への内政干渉に激しく反発する。

このタンキー諸君と民主派の中国人活動家との主戦場はインターネットだ。ツイッターでの激しい応酬があり、タンキーによる特定の人物への中傷攻撃があり、悪意に満ちた言葉の暴力もある。民主派も、タンキーや「スターリン主義者」の妄言を集めて揶揄するアカウントを作ったり、彼らの投稿のコメント欄に執拗な反論を書き込み、一般のツイッター利用者がタンキーの主張に惑わされないように防衛線を張ったりしている。

「なぜ私は、わざわざ彼らにけんかを売るのか」と語るのは、ムートと名乗る香港の民主活動家だ。彼はタンキーによるツイートのコメント欄を監視し、反論を書き込む活動を続けている。

タンキーによる投稿を見つけたら、それは「その発言の下に自分の反論コメントを書き込むチャンスだと思う。その発言に問題があることを警告できるのだから」とムートは言う。「彼らの主張は救い難く、とにかく一方的だ」

お気楽に安全な場所から

香港の民主派はなぜ、タンキーを目の敵にするのか。彼らの多くは(前米大統領のドナルド・トランプと同様に)「左翼=中国支持派」と見なしているし、今ではSNSが抵抗の主要な手段となっているからだ。

そもそも、「タンキー」は20世紀後半の冷戦時代にイギリスの共産党支持者を指す言葉として使われ始めた。当時のソ連がハンガリーなどの衛星国に戦車を出して市民の蜂起を弾圧しても、頑迷な彼らはソ連支持を変えなかった。そんな連中を指す言葉として、タンキーは定着した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

VW、生産休止計画 ネクスペリア半導体供給問題とは

ワールド

トランプ米大統領、インドのモディ首相と会談 貿易巡

ワールド

米ロ首脳会談の実現に暗雲、ロの強硬姿勢が交渉の足か

ワールド

カナダ首相、鉄鋼・アルミ貿易巡る対米協議の行方に慎
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない「パイオニア精神」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」では…
  • 10
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中