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原発事故政府、福島第一原発処理水の海洋放出を決定 中国「極めて無責任」と非難
政府は13日、「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚会議」を開き、福島第1原子力発電所にたまり続ける多核種除去設備(ALPS)処理水を海洋放出することを決めた。原子力規制委員会の許可を経て、東京電力ホールディングスが2年程度後に放出を開始する。写真は福島第1原発の処理水貯蔵タンク。2019年2月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)
政府は13日、福島第1原子力発電所にたまり続ける多核種除去設備(ALPS)処理水を海洋放出することを決めた。原子力規制委員会の許可を経て、東京電力ホールディングスがおよそ2年後に放出を開始する。政府は風評被害対策としてモニタリングの強化や情報公開を徹底するとしているが、漁業関係者や近隣国からの懸念は根強い。
東京電力は海洋放出の開始に向け、設備の設置など準備を進める。処理水をためているタンクは2022年秋ごろにもいっぱいになるため、ぎりぎりのタイミングでの決定となった。今後は、溶け落ちた燃料(デブリ)の取り出しなど廃炉作業を本格的に進めるためにタンクを減らすことも必要となる。
菅義偉首相は同日朝に開いた「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚会議」で、「処理水の処分は福島第1原発の避けては通れない課題」とした上で、「政府を挙げて風評対策を徹底することを前提に海洋放出が現実的と判断した」と述べた。
福島第1原発は2011年に発生した東日本大震災に伴う津波により損傷、高濃度の放射性物質に汚染された水が発生している。東電は、ALPSを使って「汚染水」から大部分の放射性物質を取り除いているが、除去できないトリチウムは残っている。現在、処理水は約125万トンに上る。
海洋放出は、処理水を大幅に希釈した上で実施する。また、放出するトリチウムの年間総量は、事故前の福島第1原発の放出管理量(年間22兆ベクレル)を下回る水準になるように行う、としている。タンクに保管している水のトリチウム濃度は、1リットル当たり約15万―約250万ベクレル。放出期間は事故発生から30―40年としている廃炉期間内で相当程度の時間がかかると想定している。
求められる風評被害対策
地元の漁業関係者からは、海洋放出に対し強い反対の声が上がる。全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は政府の決定後、「到底容認できるものではない。強く抗議する」とのコメントを発表した。岸会長らは7日に菅首相と面会した際、「反対の考えはいささかも変わらない」と伝えていた。
放出作業の主体となる東電の小早川智明社長は、「最大限風評を抑制すべく、われわれの立場でできる範囲のことは取り組んでいきたい」と説明。国内外に正確な情報発信を行っていくと語った。仮に風評被害が生じた場合には、現在の枠組みで賠償を行うことになる。
政府は基本方針に「東電が風評影響の発生を最大限回避する責任が生じる」と記した。
政府は安全性について情報発信を強化し、影響を受ける可能性がある事業者の理解を深めたい考え。水産物の放射性物質のモニタリングを実施し、随時公表する。海外に対しても、国際原子力機関(IAEA)などの協力を得て、情報公開を徹底する。地元の関係者とも意見交換を続け、風評対策の追加や見直しを行う中で、理解を得ていくことを目指す。
東電は、政府が決めた基本方針に沿って対応方針を策定する。政府は「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議」を設置し、追加対策の必要性を検討し、それを機動的に実施するとした。
中国外務省からは懸念、米国は評価
中国外務省は日本の決定を受け、「極めて無責任」との声明を発表した。前日には近隣諸国への影響を指摘した上で、外交ルートを通じて日本側に懸念を表明したと明らかにしていた。
一方、米国務省は13日、「この独特で困難な状況において、日本は透明性を保ち、世界的な原子力安全基準に沿った手法を採用したと認識している」と評価した。
*内容を追加しました。
(清水律子 田中志保 編集:久保信博)
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