最新記事

米ロ関係

米、ロシア外交官国外10人追放 大統領選介入やサイバー攻撃で制裁

2021年4月16日(金)09時07分

米政府は15日、ロシアによる昨年の米大統領選への介入やサイバー攻撃など「悪質」な活動に対する報復として、包括的な制裁措置を発動した(2021年 ロイター/Anton Vaganov)

米政府は15日、ロシアによる昨年の米大統領選への介入やサイバー攻撃など「悪質」な活動に対する報復として、包括的な制裁措置を発動した。

米財務省は、昨年の大統領選への介入に絡み32団体・個人を制裁対象に指定。さらに、2014年のウクライナ南部クリミア半島編入とその後の抑圧に関与した8団体・個人にも制裁を加えた。

これに合わせて、バイデン大統領はロシア経済のあらゆる部門に制裁を科す大統領令に署名。米国の金融機関は6月14日以降、発行市場においてルーブル建てロシア国債の取引が禁止される。一方、流通市場での取引は禁止対象に含まれない。

この他、ホワイトハウスは、米政府機関に対するサイバー攻撃にロシア対外情報局(SVR)が関与したと断定。情報当局者を含め外交官10人を国外追放すると発表した。

サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)はCNNテレビのインタビューで、今回の制裁が「ロシアの有害な行動から米国の利益を守るための措置」であると説明。同時に「バイデン大統領の目的は重要かつ信頼ある対応を提供することであり、状況をエスカレートさせることではない」と述べた。

ホワイトハウスのサキ大統領報道官も「われわれの目的は状況をエスカレートさせることではなく、ロシア政府による容認できない行動に対してコストを課すことだ」と強調した。

バイデン大統領は「私の結論はこうだ。ロシアとの協力は米国の国益になる。われわれはそうすべきであり、そうしていく」とした上で「ロシアが米国の国益を損なおうとした場合、米国は対応する」と表明。

「さらに制裁を加えることもできたが、そうせず、相応の対応にとどめた」とし、ロシアに緊張緩和を呼び掛けた。

ロシア外務省は、米国の制裁が両国関係を危険にさらすものだと反発。サリバン駐ロ大使を呼び出し抗議するとした上で、近い将来、対抗措置を講じる予定で、首脳会談の実現も危ぶまれると表明した。

カーネギー国際平和財団のアナリスト、アンドリュー・ワイス氏は、今回の制裁が直ちに両国関係に変化をもたらし、長期的にロシアを抑止するものとは考えにくいと指摘。ロシアが一定の分野で協力の意思を示すとしても、ウクライナや選挙介入の問題で意見の一致を見ることはないだろうとし、「新たな制裁措置がロシアの思惑を根本的に変えると期待するのは現実的でない」と話した。

*バイデン米大統領のコメントを追加しました。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中