マスクなし1カ月、レンジャーズ戦ほぼ満員のテキサスで、感染者は「右肩下がり」
とはいえ、データを見る限り今のところ感染状況が再び悪化している様子はない。
ニューヨーク・タイムズがまとめたデータに基づいて算出すると、テキサス州の1日当たりの新規感染者数(7日移動平均)は3月10日の4909人から執筆時点で最新の4月6日には3114人まで約37%減少し、死亡者数も同期間に190人から79人に58%余り減少した。全米では死亡者数が同様に半減しているものの、新規感染者数はむしろ13%増加している。
これに対して、ワクチン接種は急速に広がっており、足元では2回の接種を終えた人が17%、少なくとも1回の接種を行った人が29%となっている。全米のそれぞれ19%と33%は若干下回っているが、バイデン大統領が4月19日から米国の全成人がワクチンを受けられるようになるとの見通しを示した一方、テキサス州では3月29日からすでに接種対象が全成人へと拡大された。
ただ、米国のコロナ対策を主導する国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、油断は禁物だと釘を刺す。
同所長は今週、MSNBCとのインタビューでテキサス州の状況について問われ、現時点の行動の影響がデータに現れるには数週間かかるとしたうえで、「これまでにも事業を再開し始め、すぐには何も起こらなかったが、数週間後に(感染が)突然爆発的に増える状況にわれわれはだまされてきた。これを早まって判断しないように注意しなければならない」と警鐘を鳴らした。
一方、月次GDPや小売売上高など、規制解除以降の景気動向を表すデータはまだ明らかになっていない。州経済への影響を考慮して早期の事業再開に踏み切ったアボット知事の決断が吉と出るか凶と出るかを占うには、まだ少し時間がかかりそうだ。
ジェンキンス沙智
フリーランスジャーナリスト兼翻訳家。
テキサス大学オースティン校卒業後にロイター通信に入社し、東京支局で英文記者としてテクノロジー、通信、航空、食品、小売業界などを中心に企業ニュースを担当した。2010年に退職・渡米し、フリーランスに転向。これまでに、WSJ日本版コラム「ジェンキンス沙智の米国ワーキングマザー当世事情」を執筆したほか、週刊エコノミストやロイターなどの媒体に寄稿した。現在は執筆活動に加え、大手金融機関やメディアを顧客に金融・ビジネス・経済分野の翻訳サービスを提供している。JTFほんやく検定1級翻訳士(金融・証券)。米テキサス州オースティン近郊在住、愛知県出身。
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