最新記事

ブラックホール

無数の星? いいえ、白い点はすべて超大質量ブラックホール 星図が作成される

2021年3月1日(月)18時00分
松岡由希子

北の空に広がる2万5000個以上の超大質量ブラックホールを表す星図が作成された LOFAR/LOL Survey

<欧州9カ国52カ所の数千もの小型アンテナからなる世界最大級の電波望遠鏡「LOFAR(低周波電波干渉計)」とスーパーコンピューターを用いて、超大質量ブラックホールを表わす星図の作成に成功した...... >

銀河系を含め、ほぼすべての銀河の中心には、太陽の100万倍以上もの質量を有する超大質量ブラックホール(SMBH)が存在すると考えられている。このほど、北の空に広がる2万5000個以上の超大質量ブラックホールを表す星図が作成された。

mosaic-pr-moon-1024x433.png

LOFAR/LOL Survey

ブラックホールに巻き込まれた周りの物質によって、電波が放出

蘭ライデン大学らの国際研究チームは、オランダ、ドイツ、フランス、英国など、欧州9カ国52カ所の観測所に設置された数千もの小型アンテナからなる世界最大級の電波望遠鏡「LOFAR(低周波電波干渉計)」と独自に開発したアルゴリズム、スーパーコンピューターを用いて、2万5247個の超大質量ブラックホールを表わす星図の作成に成功した。一連の研究成果は、学術雑誌「アストロノミー・アンド・アストロフィジックス」に掲載される予定だ。

1024px-LOFAR_Superterp.jpg

オランダの「LOFAR(低周波電波干渉計)」

この星図で示されている白い点は、一見、無数の星のように見えるが、実際は、超大質量ブラックホールである。ブラックホールに巻き込まれた周りの物質によって、電波が放出される。

低周波な電波を用いた「LOFAR」による地上からの観測では、地球を取り巻く電離層の影響を避けられないのが課題であった。電離層が「LOFAR」を絶えず横切り、曇ったレンズのような作用をもたらす。

研究論文の共同著者でライデン大学のレイナウト・ファン=ウィレン准教授は、この状況を「プールの中に潜った状態で、外を見上げるようなものだ」とたとえる。プールの中から見上げると、水の波によって光が屈折し、視界が歪む。

今回作成された星図は、北半分の空の4%

そこで研究チームは、電離層による歪みを4秒ごとに修正する新たなアルゴリズムを実装したスーパーコンピューターを用いて、256時間にわたる観測データを統合し、星図を作成した。

研究論文の責任著者でヒュップ・ロッテリング教授は「長年にわたるソフトウェア開発の末、これがとてもうまくいったことを確認できて嬉しい」と研究成果への喜びを語っている

今回作成された星図は、北半分の空の4%を網羅している。研究チームでは、今後、この手法を用いて、北半分の空をすべてまとめた星図を完成させる方針だ。

A Sky Map of 25000 Supermassive Black Holes


LOFAR (Low Frequency Array) and ASTRON

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と初会談 「多くの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中