震災から10年、検証なきインフラ投資 復興に重い課題
高齢化の影響もうかがわれる。気仙沼の高齢化率は38%、10年前の30%から上昇した。陸前高田も39.6%だ。どちらも全国平均の28%を大きく上回っている。気仙沼市小泉地区で当初計画の半分程度しか入居しなかったのは、他の土地への移転に加え、当初の入居希望者が65歳を過ぎて住宅ローンの借入審査が通らなくなったことや、老人施設に入居したことも一因だ。
インフラ投資に偏った復興予算、若手人材対策に回せず
防潮堤や道路整備、土地かさ上げや宅地造成といったインフラへの投資額は13.4兆円にのぼり、31兆円の復興事業費の3分の1以上を占めた。
これに対し、産業再生への支出は4.4兆円と、インフラ投資の3分の1の規模にとどまる。それでも、三陸地域などで産業の中心だった食品加工業をはじめ、被災3県の製造業の付加価値は震災前より26%程度増加。再生の兆しは見えてきた。
一方で、働き手となる人口の減少には歯止めがかからず、「人への投資」は後手に回った。震災直前の2010年から19年までの3県の人口減少率は5.4%と全国の1.5%減を大きく上回る。特に三陸海岸地域のように都市部から遠く離れた街では、若手人材や大学・企業の誘致への施策が乏しく、新たな産業の呼び込みは困難だ。
気仙沼市の今川議員は「復興予算は使途が限定されていた。予算が自由に配られて市町村が独自に使えるのであれば、若い人や移住者を呼び込む施策に取り組めた」と語る。仙台から遠い地のりで大学の誘致もままならないため、先端企業の誘致も難しく、人口減少と高齢化に対応した新たな街づくりは難しい課題だという。
明治大学公共政策大学院の田中秀明専任教授は「防潮堤やかさ上げなどの街づくりは、人口減少を考慮しもっと時間をかけるべきだった。この10年間、何が問題だったか、将来どうすべきかレビューしないといけない」と指摘する。
(中川泉 金子かおり Daniel Leussink 編集:石田仁志)
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