最新記事

フランス

フランス・リヨン市、環境派市長「給食を肉なしメニューに統一」で大論争に

2021年2月26日(金)17時30分
冠ゆき

政策批判ではなく、政党批判?

両サイドの言い分を聞くに、中道右派の「肉なし単一メニュー給食」批判は、少々過剰反応に聞こえる。極めつけは、複数のメディアが指摘するように、同じ措置を前市長ジェラール・コランも講じていたという事実だ。最初のロックダウン解除時、2020年5月から7月まで、コラン前市長は今回と全く同じ理由で、学校の給食を肉なしのメニューに統一した。だが、共和国前進に属するコロン元市長の決定には、当時誰一人として非難の刃を向けなかったのだ。

だが、コロン前市長は、政策を踏襲したドゥセ市長を擁護する気はまったくないようだ。というのも、肉なし単一メニュー給食が始まった2月22日、リヨン市役所の前では約100人の農業従事者が肉なし給食反対のデモを行ったのだが、コロン元市長は、このデモ隊に支援の言葉を送っている(20minutes、2/22)。

こうした論争にニュース専門局BFMTV (2/22)は、ダルマナン内相の「多くの子供たちは、学校給食でしか肉を食べられない」という発言を取り上げ、2016年~2019年に行われた調査結果に基づき、富裕層よりも貧困層のほうが肉の摂取量が多いことを報じている。つまりダルマナン内相の批判の根拠には、少なくとも柱が一本足りないことになる。

中道右派内部でも意見が分かれる

同じ中道右派内でも、意見が皆一致するわけではない。少なくとも、オリヴィエ・ヴェラン厚生相は、22日の時点ですでに本件に関して「議論の必要はないと考える」と発言している。

同じ共和国前進に属する政治家間でも意見は割れている。例えば、バルバラ・ポンピリ エコロジー移行大臣は、ダルマナン内相に対し「菜食主義の食べ物が偏った食事だという」決まり文句を残念に思うと、22日異議を唱えた。そのポンピリ大臣に対して、共和国前進のスポークスパーソンを務めるジャン=バティスト・モローが「子供の成長に不可欠な栄養素は肉に含まれている。(中略)実用主義はあなたには理解できない概念なんでしょう」とツイート。さらにそのモローの発言を、国民議会のユーグ・ランソン副議長が「独断主義」と批判するといった具合だ。政敵EELVをやり込めるつもりが、思いがけず自党のほころびを露呈したとも言えそうだ。


French city cooks up furore over meat-free school lunches

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中