最新記事

生物

米フロリダ州に座礁したクジラは新種だった

2021年2月10日(水)18時10分
松岡由希子

2019年にフロリダ州に座礁したクジラは、新種のクジラだった...... Florida Everglades National Park

<2019年にフロリダ州で座礁していたクジラが、新種のクジラであったことがわかった......>

2019年1月29日、米フロリダ州エバーグレーズ国立公園で、体長38フィート(約11.5メートル)のオスのクジラが座礁しているのが見つかった。

アメリカ海洋大気庁(NOAA)らの研究チームが分析した結果、メキシコ湾で生息するヒゲクジラ類の新種と同定され、2021年1月10日、海洋哺乳類専門学術雑誌「マリンママルサイエンス」でその研究論文が発表された。

ライス博士にちなんで「ライスクジラ」と名付けられた

この新種のクジラは、メキシコ湾にクジラが生息することを1990年代に初めて発見した海洋哺乳動物学者のデール・ライス博士にちなんで「ライスクジラ」と名付けられている。

当時、これらのクジラはニタリクジラだと考えられていたが、2008年、アメリカ海洋大気庁のパトリシア・ローゼル博士を中心とする研究チームがメキシコ湾で採取した試料から得た遺伝子データを分析し、ニタリクジラとは遺伝的に異なることを示した。しかし、クジラの新種の同定に不可欠な頭蓋骨がなかったため、これには至らなかった。

2019年1月にエバーグレーズ国立公園で座礁していたクジラの死骸は、体長測定などの検査や剖検を行った後、一旦埋められたが、国立自然史博物館(NMNH)の研究チームによって、数ヶ月後に骨が掘り起こされ、ワシントンD.C.郊外にある国立自然史博物館の倉庫に搬入された。

現時点で100頭未満であり、絶滅が危惧されている

研究論文の筆頭著者であるローゼル博士と共同著者で国立科学博物館の山田格博士は、2020年、このクジラの頭蓋骨を初めて形態学的に観察し、ヒゲクジラ類に属する他の種とは異なる特性を特定した。この形態学的相違と2008年にローゼル博士らが収集した遺伝子データをふまえ、「このクジラはヒゲクジラ類の新種である」と結論されている。

ライスクジラは、体長が最長42フィート(約12.8メートル)で、ニタリクジラもやや小さく、体重は最大で6万ポンド(約27.2トン)に達する。なお、個体数は現時点で100頭未満であり、絶滅が危惧されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、6月の英販売台数は前年比12%増=調査

ワールド

豪家計支出、5月は前月比+0.9% 消費回復

ワールド

常に必要な連絡体制を保持し協議進める=参院選中の日

ワールド

中国、太平洋島しょ地域で基地建設望まず 在フィジー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中