最新記事

日本社会

飽食ニッポンで「飢餓」経験者が急増している

2021年1月28日(木)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本では食品ロスと飢餓の問題が同時に起きている kuppa_rock/iStock.

<食品ロスが社会問題になる一方で飢餓が広がるのは、それだけ格差が大きくなっているため>

新型コロナウイルスの影響で、日本社会は大変な状況が続いているが、昨年は天候が良く、農作物の育ちが良い豊作だったそうだ。しかし外食産業の落ち込みで需要が減っているので、供給過剰で値崩れが起き、農家は頭を抱えている。いわゆる豊作貧乏だ。

余剰の農作物は廃棄されるという。コロナ禍で1日1食という人もいるのだから、困っている人、お腹を空かせている人に届けることはできないものだろうか。食べられる物を捨てる、いわゆる食品ロスが社会問題化して久しいが、今の日本では対極の問題(飢餓)も起きている。

飽食の国・ニッポンで飢餓なんてあるはずないと思われるだろうが、統計で見ても「食糧の不足」という原因で死ぬ人は毎年いるし、死までいかなくても十分な食べ物がない状態で過ごしている人となると、裾野はかなり広がる。

それはデータで示せる。2017~20年にかけて各国の研究者が共同で実施した『第7回・世界価値観調査』では、「この1年間で、十分な食料がない状態で過ごしたことがあるか」と尋ねている。18歳以上の国民のうち、「しばしばあった」「時々あった」と答えた人のパーセンテージを出し、49の国を高い順に並べると以下のようになる。

data210128-chart01.jpg

飢餓経験率の国際比較だ。予想通りというか、発展途上国では数値が高くなっている。アフリカのナイジェリアやジンバブエでは、程度の差はあれ、半数近くの国民が飢えを経験している。最近、日本人がよく出向くようになっているタイやフィリピンは3割弱で、大国のアメリカは12.5%だ。

日本は9.2%で、国民の1割弱が飢餓を経験している。世界全体では低い部類だが、お隣の韓国や中国、ヨーロッパのドイツと比べると格段に高い。英仏や北欧のデータはないが、先進国の中では飢餓率が高いとみていい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中