最新記事

日本社会

人口激減と超高齢化......2020年代以降の日本を待ち受ける未曽有の大変化

2021年1月20日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本は国土が狭いので人口が減ってもいい、という声もある。だが問題なのは人口の中身だ。バリバリ働ける生産年齢層が減り、体力の弱った高齢層が多くなる。グラフの終点の2060年を見ると、日本の人口は9284万人となり、そのうちの38.3%(A)が65歳以上の高齢者と見込まれる。人口は減り続け、2055年から60年までの5年間の人口増加率はマイナス3.73%(B)だ。

Aは老いの指標、Bは社会の活力の指標と読める。この2つをとった座標上に、2060年の世界の各国を配置すると<図2>のようになる。ドットの大きさで同年の人口量も表現した。

data21-120-chart02.jpg

ドットの大きさを見ると、人口首位はインド、2位は中国、3位はナイジェリアとなっている。日本は、この頃には世界の人口ランクで20位まで落ちる(現在は11位)。

左上は若くて活力のある国々で、ほとんどがアフリカの諸国だ。今後の世界の人口は増え続けるが、増分の多くはアフリカの国々で、宗教人口だと世界の3人に1人がムスリムになるという予測もある。

中ほどをみると、先進国のアメリカやイギリスは2060年になっても人口増を保てると見込まれる。中国は人口減少社会の部類に入っていて、この大国が外国人労働者を欲するとなったら、争奪戦は相当に激しくなるだろう。日本はと言うと、右下のゾーンにある。老いた、活力のない社会で、その極地はお隣の韓国だ。

韓国の若者は国外脱出を志向

これが2060年の国際社会の布置図だ。この頃の日本は5人に2人が高齢者で、毎年人口が100万人近く減るような社会だ。今のレベルの生産活動を行えているかどうかは分からない。機械化、ICT(情報通信技術)化、移民の受け入れを極限まで進め、どうにか国の体裁を保っているような状況だろう。

同じような未来が予想される韓国では、若者の国外脱出志向が強い。13~29歳の8割が「外国に永住したい」「一定期間、外国に住みたい」「自国と外国を往来して暮らしたい」と答えている(内閣府『我が国と諸外国の若者の意識調査』2018年)。

日本では、今の居心地が良いためか「ずっと自国で暮らしたい」若者が6割と多くを占める。だがこの状況は変わり、国内で得られる給与の安さも相まって、若い労働者が海外に出ていく「出稼ぎ大国」になるかもしれない。確かなのは2020年代以降、日本を未曽有の大変化が待ち受けていることだ。

<資料:総務省統計局『日本統計年鑑2021』
    UN「Revision of World Population Prospects 2019」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、「TikTok米事業に大型買い手」 詳

ビジネス

米輸入物価、8月は0.3%上昇 資本財・消費財の価

ワールド

イスラエル、イエメンのホデイダ港を攻撃=フーシ派系

ワールド

トランプ政権、クックFRB理事解任阻止巡り上訴へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中