アメリカの航空会社、「感情支援動物」の機内同伴、犬だけに制限へ
米国では、これまで乗客は必要であれば感情支援動物を無料で客室内に同伴できる権利が与えられていた......Jaimie Tuchman-iStock
<米国ではこれまで、運輸省が定める航空アクセス法により、乗客は必要であれば感情支援動物を無料で客室内に同伴できる権利が与えられていたが、変更に......>
精神面をサポートする動物、今後は介助犬のみに
米国の航空会社はこれまで、精神的な支えになる動物を無料で客席に連れて行くことを許可してきたが、規則が変更されることになり、今後は無料で同伴できるのは介助犬のみとなる。米運輸省が発表した。
精神的な支えになる動物は、航空会社によって日本語での呼び方はさまざまだが、「感情支援動物」や「介助動物」などと呼ばれ、精神面・心理面で不安のある人にとって支えや癒しとなる動物を指す。
米国ではこれまで、運輸省が定める航空アクセス法により、乗客は必要であれば感情支援動物を無料で客室内に同伴できる権利が与えられていた。動物は、対象となる人の精神を支えるための訓練などを受けている必要はなかった。
しかし運輸省はこのほど、同法で感情支援動物について定める項目を変更。今後は、精神面のサポートとして無料で客室に同伴できるのは「介助動物」のみとなる。また「介助動物」の定義は、「障害のある人を支援する目的で訓練を受けた犬」となり、「感情支援動物」は「介助動物」とみなされなくなる。
USAトゥデイによると、細かい方針については航空会社が定めることになっているが、航空アクセス法に準拠する必要がある。今回の変更は、連邦公報で告示されてから30日後に発効とされている。告示日は公表されていないが、米ニューヨーク・タイムズ(NTY)は「来月施行」と報じている。
制度を悪用する人たち
感情支援動物をめぐっては、これまで多くの議論がなされてきた。米CNNによると航空各社は、感情支援動物の問題にもっと取り組むよう運輸省に求めてきた。というのも、通常のペットを無料で同伴するために、感情支援動物として申請するケースが懸念されたからだ。ユナイテッド航空の場合、一定の条件を満たせばペットの犬または猫を客室内に連れて行けるが、代金は125ドル(約1万3000円)となる。
英紙ガーディアンは2019年、通常のペットを感情支援動物として客室内に持ち込む人たちについて報じていた。ペットを感情支援動物として申請するのは簡単だが、本当にこの制度を必要としている人たちが犠牲になっていると同紙は書いている。記事によると、感情支援動物を航空会社に申請するには通常、セラピストの診断書が必要となる。しかしお金さえ払えば、ウェブサイトでそのような書面を発行してくれるサービスも存在するのだ。
2018年のデルタ航空のデータでは、2016年と比べて動物がらみの問題(機内でふんやおしっこをしたり乗客に噛み付いたりなど)が84%増加したという。