RCEP締結に習近平「高笑い」──トランプ政権の遺産
RCEP首脳会合で15カ国が協定に署名(11月15日、ベトナムのハノイ) Kham-REUTERS
RCEPの締結は中国のコロナ禍早期脱出とトランプ政権の一国主義のお陰だと、中国は大喜びだ。日中韓FTAまで内包してしまい、インドの不参加、台湾経済の孤立化も中国には有利だ。インドやロシアとはBRICSで結ばれている。
「多国間主義と自由貿易の勝利」と中国
中国共産党の機関誌「人民日報」やテレビ局CCTVは、アジアの自由貿易協定であるRCEP(アールセップ=東アジア地域包括的経済連携)締結を「多国間主義と自由貿易の勝利」と一斉に讃えた。これはトランプ政権が唱えてきた「一国主義と保護貿易」の反対側の立場としての中国を自ら礼賛する言葉で、中国はRCEPの締結を米中覇権競争における「中国側の勝利」と位置付けていることを意味する。
周知の通り、トランプ大統領は就任するとすぐにTPPからの離脱を宣言した。
今般のRCEP締結にはアメリカを筆頭とした「カナダ、メキシコ、ペルーおよびチリ」などアメリカ大陸以外のTPP加盟国(日本、オーストラリア、ニュージーランド、ベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)が参加しており、TPPには加盟していなかったASEAN(東南アジア諸国連合)諸国(インドネシア、タイ、フィリピン、カンボジア、ラオス、ミャンマー)とともに中国と韓国が加盟したので、結果、「提唱国であったASEAN10ヵ国+日中韓+オーストラリア・ニュージーランド」計15ヵ国の参加となった。
中国が積極的になったのは、言うまでもなくアメリカとの対立があるからで、いち早くコロナ禍から抜け出した中国は経済も回復しており、コロナで経済発展が低迷している周辺国を惹きつけるに十分であったと中国は分析している。
ASEAN諸国は政治的にはアメリカ寄りではあるものの、経済的には中国に頼らざるを得ず、中国はまるでASEAN諸国を中国の中庭と位置づけ胸を張っている。
日本は、あたかも日本の努力によってRCEP締結に漕ぎつけたかのように解説する傾向にあるが、中国は全くそうは思っていない。なぜなら日本を引き寄せるのは、中国にとって大きな利益をもたらすからだ。そのため日本が「日本の努力によって」と言ったとしても、それは「言わせておこう」という姿勢で、結果として日本が加盟してくれさえすれば、中国としては大いに満足なのである。
アメリカに当てつけた日本への執着
中国にとっては、日本はアメリカを代替するような存在で、何としても日本にはRCEPに加盟してほしかった。RCEP加盟国の中で断トツのGDP規模を誇る中国だが、アメリカの最大のパートナーである日本を加盟させなければRCEPの「旨味」はない。