最新記事

生物

半月形の頭部を持つヘビ? 切断しても再生し、両方生き続ける生物が米国で話題に

2020年11月10日(火)18時00分
松岡由希子

クロイロコウガイビルの頭部 根川孝太郎-wikimedia CC BY-SA 4.0

<バージニア州で、半月形の頭部を持つヘビのような30センチほどの生物が見つかり、話題になった......>

米バージニア州リッチモンド郊外のミッドロジアンで、半月形の頭部を持つヘビのような生物が見つかった。

米地方紙「シャーロット・オブザーバー」によると、地域住民からの通報を受けたバージニア州の害虫・害獣駆除サービス会社「バージニア・ワイルドライフ・マネジメント・アンド・コントロール」は、2020年10月28日、体長10〜12インチ(約25.4〜30.5センチ)の個体が映った動画をフェイスブックの公式アカウントで公開し、「このような生物はこれまで見たことがない」として一般ユーザーに情報提供を呼びかけた。なお、この投稿は11月10日時点で削除されている。

高温多湿を好む東南アジア原産の侵略性外来種、コウガイビル

この奇妙な生物は、扁平動物の一種「コウガイビル」だ。ヒルと名前はついているが、プラナリアの仲間だ。シュモクザメのような特徴的な頭部を持ち、平たく細長い。表面は粘液で覆われてぬるぬるとしており、明色に暗色の縞が入っている。扇型に広がっている頭部に口があるわけではなく、体の中程の腹面に口があり、肛門も兼ねている。

コウガイビルは、高温多湿を好む東南アジア原産の侵略性外来種だ。輸入された園芸植物を介して米国に侵入し、1901年以来、温室でたびたび見つかってきた。カリフォルニア州、テキサス州など南部を中心に7州を主な生息地とし、2019年1月にもフロリダ州北部ワクラ郡でその生息が確認されているが、バージニア州で見つかるのは珍しい。コウガイビルは、ヒトに害はないものの、ミミズを捕食することから、土壌生態系を脅かすおそれがある。

iStock-1147459998.jpgボルネオのコウガイビル Thien Woei Jiing-iStock

2つに切断すると、やがて再生し、両方とも生存し続ける

コウガイビルは、オスの生殖器官とメスの生殖器官を一個体が持つ「雌雄同体」であり、主に断片化により無性生殖する。親個体が体の後部の一部分を切ると、10日以内に頭が形成されはじめる。このような繁殖は1ヶ月に数回起こることもあり、短期間で個体数が大幅に増える可能性がある。

コウガイビルは、再生能力が高く、駆除しづらいのも難点だ。2つに切断すると、やがて再生し、両方とも生存し続ける。テキサス州立大学システム(TSUS)傘下の「テキサス侵入生物研究所(TISI)」は、柑橘系のエッセンスや塩による駆除を推奨している。

hammerhead worm (BIPALIUM) predatory behavior

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中