最新記事

米中対立

米中衝突が生むアジアの新たなパワーバランス

US-China Geopolitical Battle for Asia Shapes New Power Dynamic for Region

2020年10月26日(月)17時57分
トム・オコナー、ナビード・ジャマリ

これは他方で、アメリカが他の国々を中国との勢力争いに巻き込もうとする際にはやっかいな問題となる。特にトランプ政権高官が米中の対立をイデオロギー的なものとして語る際にはなおさらだ。

「(中国の)習近平総書記(国家主席)は、破綻した全体主義イデオロギーの真の信奉者だ」と、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は6月、中国に対して行動を起こすよう「自由を愛する世界の国々」に呼びかけた演説の中で述べた。

「まさにこのイデオロギーこそ、彼が何十年にもわたって中国の共産主義の世界的覇権を欲してきたことを示している」とポンペオは述べた。「アメリカはもはや、両国の政治やイデオロギーの根本的な違いに目をつぶっていることはできない。(中国共産党が)これまで目をつぶってこなかったように」

だが中国政府が始めているのは中国式の共産主義を輸出のではなく、世界規模の対外投資だ。習主席が掲げる「一帯一路」構想は、多くの国々に重要なインフラを供給するというプロジェクトで、中国はアジア各地からアフリカ、欧州、果ては中南米に至るさまざまな国々と合意を結んでいる。

一方でトランプの通商戦争は、少なくとも一部のアジア地域のパートナー諸国の反感を買い、一帯一路に走らせる結果となった。

コロナ対策が埋めた米中の「実力差」

「この4年間にトランプ政権が展開してきた対中戦略(と呼べるようなものがあるとすれば)は、アジア地域におけるアメリカの立場の弱体化につながった」とロウイー国際政策研究所(オーストラリア)のエルベ・ルメイユは言う。

同研究所は先ごろ、「アジアパワーインデックス」最新版を発表した。これはアジア25カ国・地域の実力を、文化的影響力や経済的能力、軍事的能力、回復力や未来に向けた資源、経済関係や国防ネットワーク、外向的影響力という8つの分野別に採点したものだ。

アメリカは1位の座を維持したが総合点は81.6点で、前年比の下落幅は25カ国中で最大だった。2位の中国(76.1点)は横ばいで、両国の差が縮まった格好だ。下落の原因は主に、新型コロナウイルス対策の違いに起因した。コロナ問題の影響は全てカテゴリーに及んだという。

日本(3位)とインド(4位)の順位は変わらなかったが、総合点はそれぞれ下がった。オーストラリア(6位)は、ベトナムと台湾と並んで総合点が上がった3カ国の1つとなった。5位につけたのは中国の緊密な戦略パートナーであるロシアだが、総合点は前年より下がった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド製造業PMI、3月は8カ月ぶり高水準 新規受

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

ユニクロ、3月国内既存店売上高は前年比1.5%減 

ビジネス

日経平均は続伸、米相互関税の詳細公表を控え模様眺め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中