新型コロナウイルスは糖尿病を引き起こす? 各国で症例相次ぐ
これまでにも、インフルエンザや既知のコロナウイルスなどによる感染症と関連した1型糖尿病の症例はあった。感染によって人体がストレスを受け、血糖値が上がることは分かっている。だが、これは糖尿病になりやすい素因を持つ人に生じやすい症状だった。最終的に糖尿病を発症する人は一部に限られ、科学者らはその理由をまだ完全には理解していない。
今年になって医師たちが目にしているのは、加齢や肥満といった2型糖尿病のリスク要因を持たないのに、COVID-19罹患後に糖尿病の急性症状を発現する人々である。
1型糖尿病の場合、初期症状として極端な喉の渇き、頻尿、体重減少などがある。アーサー・シミスさんには、これらが糖尿病の徴候とは全く分からなかった。
この夏、アーサーさんと妻のサラさんは、12歳の息子アティカスくんがやせた様子で、寝てばかりいることに気づいた。夫妻は、パンデミックのために家に閉じこもってばかりいるストレスか、成長期にあるせいだろうと考えた。
7月9日、アティカスくんの症状が続くため、アーサーさんは息子をネバダ州ガードナービルの自宅に近い緊急医療センターに連れて行った。医療スタッフは血糖値と尿中のケトン値が危険な高さになっていることに気づいた。どちらも、アティカスくんが糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に陥っていることを示していた。
医師はシミスさんに、新たに診断された1型糖尿病による昏睡を回避するには、直ちに病院での治療が必要だと告げた。父子は最も近いリノの病院まで50マイルを救急車で運ばれた。
このときアーサーさんは「どうして息子が糖尿病に」と医師たちに尋ねたという。「ひどく恐ろしかった」──。
アーサーさんは、息子が新型コロナウイルスに感染していたと考えている。この春、妻サラさんとともに症状が見られたからだ。夫妻は緊急医療センターを訪ねたが、当時は検査実施の基準が厳格化されていたため、新型コロナウイルスの検査は受けなかった。カルテによれば、集中治療室(ICU)での検査ではアティカスくんは新型コロナ陰性と診断された。だが、何週間も前にウイルスを身体に取り込んでいたか否かを判定する抗体検査を受けたことはない。
経済的困窮という追い打ち
糖尿病の急性症状から生還しても、新たに糖尿病の診断を受けた患者の生活は激変する。投薬その他糖尿病を管理するための医療用品には毎月数百ドルの費用がかかり、多くの地域では、内分泌科医の診察を受けるには長く待たされるのが一般的だ。
アリゾナ州の患者、ブエルナさんの場合、診断を受けてから2カ月以上も経過したが、継続的な血糖値測定の保険適用については、加入しているメディケイド制度での承認待ちが続いている。病気のために彼は何週間も仕事に行けず、家計は窮迫した。妻のエリカさんは妊娠8カ月で、3歳の娘カタリーナちゃんもいる。ブエルナさんがまだICUにいた8月2日、一家は立ち退き通知を受けた。食事をフードバンク(無料給食所)に頼ることもある。
ブエルナさんは入院中、家族の見舞いも制限されたことでうつ状態に陥ったという。元気づけてくれたのは、姉妹からの電話だったという。
「子どもたちの成長を見守れるように、元気になりたい」と彼は言う。「まだ、この世を去るわけにはいかない」と──。
Chad Terhune(翻訳:エァクレーレン)
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