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ネット炎上の参戦者、実はヒマでも貧困でもない「高年収の役職者」という意外な実像

2020年10月16日(金)18時40分
山口 真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授) *東洋経済オンラインからの転載

ネットのデータから浮かび上がってきた「極端な人」の特徴とは…… kimberrywood - iStockphoto

ネットを見ていると、「極端な人」に高頻度で出会う。「コイツ頭おかしいだろ」「○○は人間の最下層だ」――。このような罵詈雑言は、わざわざ探そうと思わなくても、否応なしに目に入ってくることがある。

ネット上に誹謗中傷や批判あふれる現象―ネット炎上―は、年間1200件程度発生している(デジタル・クライシス総合研究所調べ)。1年は365日しかないので、1日あたり3回以上、どこかで誰かが「燃えている」のが現実といえる。

最近世間をにぎわせている新型コロナウイルスも、この不寛容さを加速させる。ひとたび感染が報じられれば、あたかも感染者が罪人かのようにバッシングされる。SNSや掲示板では、感染者やその家族の個人情報を拡散され、熾烈な誹謗中傷攻撃が始まる。4月の炎上件数は、前年同月比でなんと3.4倍に増加した。

「自粛警察」という言葉を聞いたことのある人も多いだろう。自粛警察とは、緊急事態宣言の下で外出や営業の自粛要請に応じない個人や企業に対し、通報する・中傷ビラを貼る・電話をする・ネットで攻撃するなどで、私的に取り締まりを行う人たちのことだ。

こうしてみると、「極端な人」が、ときにSNS上の誹謗中傷投稿者として、ときに自粛警察として、ときにネット炎上に加担する人として、その力をふるっているように見える。

その影響は甚大だ。進学・結婚が取り消しになった人、活動自粛せざるをえなくなった芸能人、倒産してしまった企業......なかには、誹謗中傷を苦に亡くなってしまうような例もある。

拙著『正義を振りかざす「極端な人」の正体』では、このように社会に大きな影響を与える「極端な人」がどういった人でどれくらいいるのか、なぜ極端な態度になるのか。その正体に、事例分析とデータ分析から迫っている。

「極端な人」は低学歴の引きこもり?

「極端な人」というのは、どういう人たちなのだろうか。年がら年中ネットをしている、低学歴の引きこもりの人だろうか。あるいは、比較的時間があってネットにも精通している若い学生だろうか。

その「正体」を追うのに、いくつか適した事例がある。例えば、「弁護士懲戒請求問題」では、被害にあった弁護士が「極端な人」の正体に触れている。

弁護士懲戒請求問題は、東京弁護士会が「朝鮮学校への適正な補助金交付を求める会長声明」を出したことを快く思わなかった人々が、特定の弁護士に約1000通の懲戒請求を送った事例である(ちなみに、被害にあった弁護士は声明と関係がなかった)。

この弁護士は、損害賠償請求訴訟を提起することになるわけだが、その結果明らかになったのが、懲戒請求を送ったのは若い人どころか、なんと高齢者がほとんどということであった。これについては、被害者となった弁護士も意外だったようで、「驚くことに」と表現している。

ほかに、お笑い芸人のスマイリーキクチさんがある凶悪事件の犯人というデマをもとに、長年にわたり心無い誹謗中傷を受け続けた事件でも、「極端な人」の素顔がわかっている。この事件では19人が書類送検されたが、彼らは年齢も性別も職業もバラバラであり、サラリーマンから妊娠中の主婦まで、多種多様な属性であったらしい。

新型コロナウイルス関連でもある。ネット掲示板に大阪府知事への殺害予告を書いた男性が、脅迫容疑で大阪府警に逮捕された事件では、年齢は35歳、飲食店経営というプロフィールがわかっている。動機としては、休業要請に応じないパチンコ店の店名を、知事が公表したことへの不満とみられている。

炎上参加者は「年収が高い」

誰が「極端な人」なのか。私が2014年と2016年に実施した、それぞれ2万人と4万人のデータを使ったネット炎上に関する実証研究も、「極端な人」の驚くべき実態を示している。

なんと、「男性」「年収が高い」「主任・係長クラス以上」といった属性であると、炎上に参加する(書き込む)傾向にあるという結果になったのだ。事例だけでなく、データ分析結果からも、旧来言われていたような「極端な人」の属性が、的外れだったことが示されたといえる。

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