最新記事

歴史

パンデミック後には大規模な騒乱が起こる

History Tells Us Epidemics Are Followed by Huge Civil Unrest for These Three Reasons

2020年9月8日(火)18時05分
カシュミラ・ガンダー

彼らはさらに、こうした不満感や社会の不和に加えて、不安感やストレスに満ちた社会関係が人々を個人の生活領域の中に閉じ込める傾向があり、「必然的に抗議運動の社会的なつながりが緩くなっている」と説明。しかし、その同じ条件が後々、人々をより攻撃的にする可能性もあり「パンデミック後に社会的な争いが増えると予想される」と述べた。

2人は「各国政府が権力を強化するために、パンデミック下で導入した自由の制限を戦略的に利用する可能性がある」と続けた。「(ハンガリーの)ビクトル・オルバン首相やドナルド・トランプ米大統領は、そのほかの全ての問題よりも法と秩序の維持が重要だと強調しようとしていることで知られるが、彼らが最も目立つ存在というだけで、同じような考えを持つ指導者は大勢いる」

モレッリとチェンソロは、疫病と社会不安の関係性を明らかにするためには、より高度な歴史分析が必要だと認めている。

米キーン州立大学のスーザン・ウェード准教授(歴史学・中世ヨーロッパ)も、6月にジョージ・フロイドが警察に拘束されて死亡した事件を受けて世界中で大規模なデモが起きた際、学術系ニュースサイト「ザ・カンバセーション」で発表した論文で同じような見解を示した。

避けられない争い

「パンデミックのさなかにアメリカで幅広い騒乱が起きている今の状態は、14世紀の暴動と興味深い共通点がある」と彼女は書いた。

「21世紀型資本主義による経済格差――最も裕福な1%の人々が世界の富の半分以上を保有している状態――が、14世紀ヨーロッパに似てきているように思う」と彼女は指摘。「所得の不平等があまりに深刻化し、一連の不平等が長期的な抑圧から起きていることを考えると、2020年に各地で起きている類の騒乱は、避けられないものなのかもしれない」と結論づけた。

ウェイドは本誌に対して、モレッリとチェンソロによる研究は「私たちが現在直面している状況について、理解を深めるための幾らかの材料になるかもしれない」との見解を示し、その理由として「実際に14世紀に起きたことと、アメリカでいま起きている騒乱の間には複数の類似点があるように思うから」だと語った。

【話題の記事】
中国のスーパースプレッダー、エレベーターに一度乗っただけで71人が2次感染
傲慢な中国は世界の嫌われ者
中国からの「謎の種」、播いたら生えてきたのは......?
地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米副大統領、トランプ氏を擁護 プーチン氏との会談巡

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使と会談 投資と安保「迅速な合

ワールド

トランプ氏のガザ構想は「新機軸」、住民追放意図せず

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中