エジプトにようやく届いた#MeTooの波 取材中に集団レイプされた米女性記者が語る変化の兆し
“Me Too” Comes to Egypt
エジプトの多くの女性にとって、男性の同伴なしの外出は推奨されないだけでなく、不快な経験になることも知った。スーダンのような国から来た単純労働者の女性がカイロで公共交通機関に乗れば、トラウマを負うことになる。反撃する力もなく、何らかの正義も期待できないまま毎日セクハラの試練にさらされるのだから。
カイロの女子大生にとって安全な場所は、授業に向かう車の中だけだ。大学の駐車場に着けば、もう安全な空間は確保できない。
もちろん国家や警察、イスラム教徒、家族がエジプトの女性たちに責任を負わせていることも私は学んだ。不適切な視線を集めないよう、きちんとした服装をするのが女性の務めだとクギを刺す街角のポスターについての記事を読んだことがある。「被害者を責める」のは、アメリカを含む多くの社会でおなじみの風潮だ。だが幸いアメリカでは、以前よりそうした事態が随分減っている。
当局を動かすネット告発
あの夜、タハリール広場でレイプされ、性的暴行を受けた女性は私だけではない。被害者の多くはエジプト人だったが、彼女たちの事件が世界で報道されることはなかった。私は、あの夜にレイプされたアフリカ人女性がいることを知っている。本人たちから手紙をもらったからだ。彼女たちの恐ろしい経験は、今でも私の心の中に残っている。
それでも私は、エジプトの女性たちが最近、ソーシャルメディアで#MeToo運動を展開し、性的暴行の被害を語り、互いに支え合う姿に希望を感じている。彼女たちの反乱をきっかけに、当局は7月にエジプト人学生を逮捕し、3件の強制わいせつ容疑で起訴した。これは、エジプト女性の声が影響を持ち始めていることの証しだ。
エジプト人、特に男性に会うたびに、彼らは私に謝罪し、エジプトの男性がみんな「そうではない」と断言する。私の答えはいつも同じ──どこにでも良いことと悪いことがあるのは分かっているし、エジプト人を責めるつもりはない、素晴らしい人々だと知っている。
私は一瞬たりとも怒りを感じたことはない。その代わり、希望を持っている。数々の不正や虐待の中で生きているエジプトの人々にとって、潮目は変わりつつある、と。
何世代にもわたり、女性の在り方を定義してきた規範に立ち向かう勇敢な彼女たちに、自分は1人ではないこと、これは価値ある戦いだと知ってほしい。これからは男女を問わず、勇気ある人々が共に戦っていくはずだから。
(筆者はフォックス・ネーションの『ララ・ローガン・ハズ・ノー・アジェンダ』の司会者。2011年、エジプト取材中のレイプ被害をCBSが発表し、世界に衝撃が走った)
<2020年9月15日号掲載>
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