最新記事

中国

安倍首相辞任表明、中国共産党系メディア「日米を離間させ、日本を取り込め!」

2020年8月31日(月)10時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国が「日中友好を重んじた良い首相だった」と評価するということは「まんまと中国の戦略に嵌って、中国に有利に働いた」ということであり、「中国の繁栄と強国化に手を貸してくれた」という意味なのである。そんなことに気づかない日本のメディアも真のジャーナリズム精神を失ってしまっているのではないかと悲しい。

中距離弾道ミサイルの配備

中国が最も警戒しているのが中距離弾道ミサイルの日本配備だ。8月27日のコラム「中国が台湾を武力攻撃した時にアメリカは中国に勝てるか?」 でも示したように、トランプ大統領が突如INF(中距離核戦力)全廃条約から脱退したのは、中国が加盟していなかったために中国は全く無制限に中距離弾道ミサイルや中距離巡回ミサイルの開発をしてきたからだ。アメリカは我慢の限界に達し、中国のミサイル力がアメリカを凌駕しようとしていることに激しい危機感を覚えてINF全廃条約を脱退し、中国を抑えるためのポストINFミサイルを韓国や日本などに配備しようとしている。

だからこそアメリカの国防省(ペンタゴン)が気弱なシミュレーション結果を出したのだろう。それを以て「アメリカよ、頑張れ」そして「同盟国よ、現実を認識し、本気で協力してくれ」と叱咤激励をしたかったのかもしれない。

何しろ中国は2000基に及ぶミサイルを保有しており、前掲のコラムの「表2」に示した通り、ワシントンを含めたアメリカ全土をカバーできる射程距離15,000キロを出せるミサイルを保有しているのである。

それに対して日本の自衛隊が保有するミサイルの射程距離はせいぜい200キロ程度で、中国にも北朝鮮にも届きはしない。

だからこそ安倍首相はミサイル基地などを先制攻撃できる「敵基地攻撃能力」確保に向けて議論すると表明はしたのだが、しかしそのためにはアメリカのポストINFミサイルを配備する以外にない。つまり中距離弾道ミサイルを配備することだが、もしこれを実行したら中国との関係は一瞬で破壊し、習近平国賓来日の話は完全に吹き飛ぶ。

それを実行に移さなかった安倍首相は、中国にとっては「素晴らしい首相」だったのである。

中国にとって「喜ばしい」日本

8月29日、河野防衛大臣はグァムでアメリカのエスパー国防長官と会談し、中国が中距離弾道ミサイルを発射した南シナ海情勢について、一方的な現状変更の試みに反対していくことを確認した。アメリカはまさに中国のこの中距離弾道ミサイルの存在を最も警戒している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀ピル氏、QEの国債保有「非常に低い水準」まで

ワールド

クラウドフレアで障害、数千人に影響 チャットGPT

ワールド

イスラエル首相、ガザからのハマス排除を呼びかけ 国

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中