生活保護かクルマか......シングルマザーが迫られる究極の選択
交通の便が著しく悪い地域を除いて、生活保護世帯の自動車の所有は認められない Shutter2U/iStock.
<移動手段が限られる地方では、自動車の所有はもう「ぜいたく」ではない>
生活保護費を削減する自治体が相次いでいる。「保護を受けていない低所得世帯よりも、生活保護世帯の方が多く貰っている」。こういうデータに飛びついてのことかもしれないが、だとしたら浅はかだ。
下を向いて(に合わせて)ばかりいると、全ての人の生活水準が競い合うようにして奈落の底に落ちて行く。国民は、こうした「負のスパイラル」に気付かないといけない。
生存権を保障する最後の砦が生活保護だが、それを受給するのは容易ではない。生活困窮(要保護)と認められても、「生活保護世帯は●●の所有は認められない、処分せよ」と行政指導がなされる。一昔前は、生活保護世帯がクーラーを持つことに難色が示されたが、今はそうではない。熱中症が問題化している現在では、もはやクーラーは必需品の範疇だ。
しかし、自動車についてはいまだに微妙だ。交通の便が著しく悪い地域を除き、生活保護世帯は自動車の所有は認められない。「保護かクルマか」。二者択一を迫られるシングルマザーの問題について、赤石千衣子氏が報告している(「子育て世帯を直撃する生活保護の自動車保有問題」ヤフーニュース個人、2017年12月17日)。
公共交通網が発達している都市部はともかく、地方では自動車は必須だろう。ある財の必須度は、貧困層の間でそれがどれほど普及しているかで測れる。2014年の総務省『全国消費実態調査』に、貧困世帯の自動車保有量が出ている。年収下位20%の世帯1000世帯あたりの保有台数だ。<表1>は、都道府県別数値を高い順に並べたものだ。
都市部を除く37の県で1000世帯あたりの台数が1000を超えている。貧困世帯に限定しても、ほとんどの県で1世帯に1台以上ある計算だ。昭和30年代ならいざ知らず、21世紀の今では自動車はぜいたく品ではない。とりわけ地方では、移動に必要な「下駄」のようなものだ。