最新記事

教育

少子化で子どもは減っているのに、クラスは相変わらず「密」な日本の学校

2020年7月15日(水)15時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

高度成長期に比べれば確かに日本の過密学級の問題は改善されているが…… maroke/iStock.

<国際比較で見ると、1学級に多くの生徒を詰め込む日本の学校の問題は何ら解消されていない>

コロナ渦で長らく休校していた学校が再開されている。「密」を避けるため分散登校をさせている自治体が多いが、1学級当たりの子どもの数があまりに多いと、その効果も限定的になる。これは、教育行政の姿勢に関わることだ。

かつては、40~50人学級というのがザラだった。1955(昭和30)年の1学級あたりの児童・生徒数を出すと、公立小学校は43.8人、公立中学校は46.4人だ。これが時代と共に少なくなり、2016年では公立小が27.2人、公立中が32.2人となっている(OECD「Education at a Glance 2019」)。

教室の密度はだいぶ低下している。「教員数や学級数を増やし、少人数教育を」という声を上げても、「昔に比べたら良くなっている」と一蹴されがちだ。教育行政の上層部の人たちは、遠い過去の記憶が頭にこびりついているのかもしれない。

だがタテの時系列比較ではなく、ヨコの国際比較だとどうか。2016年の日本の値は上記の通りだが、OECD(経済協力開発機構)加盟国のなかで位置付けると<図1>のようになる。

data200715-chart01.jpg

日本は図表の右上に位置し、小・中学校とも1学級あたりの子どもの数が多いことが分かる。教室の面積も考慮しないといけないが、他国と比べて教室の密度が高い国といえるだろう。

子どもが多い発展途上国でこうなるのは分かるが、日本は子どもが少ないはずだ。2015年の年少人口(15歳未満)比率は13.0%と、OECD加盟国の中では最低だ。各国の年少人口比率と小学校の1学級の平均児童数を関連付けると、おおむね右上がりの傾向がみられる。だが日本はその傾向から逸れていて、子どもが少ないにもかかわらず、1つの教室に押し込められる子どもの数が多い。

<関連記事:政府が教育にカネを出さない日本に未来はあるか

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中