最新記事

教育

教師がキャリア教育まで担当する、日本の学校は世界でも特殊

2020年7月1日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

世界の学校ではキャリア教育を担当する専門のカウンセラーがいるのが一般的だが Zinkevych/iStock.

<将来の職業について考えさせるキャリア教育は専門のカウンセラーが担当するのが世界では一般的だが、日本はその標準からまったく外れた特殊な事例>

2000年代になって、フリーターやニートなど若者の就労状況が問題化して以降、学校ではキャリア教育が重視されるようになっている。2011年には中央教育審議会が「今後のキャリア教育・職業教育の在り方について」という答申を出し、キャリア教育の概念、各学校段階での指導内容等が明確にされた。

キャリア教育とは、職業的自立に必要な能力や態度を育むことだ。将来への見通しを持たせること、社会にはどういう役割(職業)があるかを知り、その中のどれを担うかをイメージさせ、それに仕向けていくことが中心となる。

日本ではこの仕事を学校の教員が担っているが、諸外国ではキャリアガイダンスを行う専門のカウンセラーがいるようだ。OECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査「PISA 2018」の結果報告書第2巻に、キャリアカウンセラーが雇われている、ないしは定期的に訪れる学校に通っている15歳生徒の率が出ている。欧米主要国の数値をみると、アメリカは82.3%、イギリスは80.3%、ドイツは81.9%、フランスは56.1%、スウェーデンは98.4%だ。では日本はどうか。<表1>は、調査対象の79カ国・地域を高い順に並べたものだ。

data200701-chart01.jpg

日本は4.4%で、79カ国・地域の中で最も低い。キャリアカウンセラーがいる学校に通っている生徒は22人に1人しかいない。日本の調査対象は15歳の高校1年生なので、高校の実情と見ていいだろう。

日本では「キャリアカウンセラー」という言葉は聞き慣れないが、諸外国ではこうしたスタッフが学校に常駐し、専門的な知見からガイダンスをするのが普通のようだ。逆に外国からはこう問われるだろう。「経済先進国の日本では、生徒のキャリアガイダンスを誰がしているのか?」と。

<関連記事:政府が教育にカネを出さない日本に未来はあるか

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中