最新記事

水素社会

ドイツ「水素技術の分野で世界ナンバーワンとなるための道筋を定めた」

2020年6月12日(金)17時30分
松岡由希子

ペーター・アルトマイヤー連邦経済エネルギー大臣 John Macdougall/REUTERS

<ドイツでは、再生可能エネルギー由来の電力で水素を生成する「グリーン水素」が新たな動力源として有望視されている ......>

気候変動アクションプラン2050」のもと、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を目指すドイツでは、再生可能エネルギー由来の電力で水素を生成する「グリーン水素」が新たな動力源として有望視されている。

「水素技術の分野でドイツが世界ナンバーワンとなるための道筋を定める」

2020年6月6日に発表された経済対策においても、中長期施策として、水素技術の研究開発を含め、再生可能エネルギーへの転換に500億ユーロ(約6兆700億円)を投じることが示されている。

6月10日には「国家水素戦略」が承認された。ドイツ国内で水素由来の電力量の需要が2030年までに90〜110TWh(テラワット時)となると仮定し、水素を製造する電解槽の規模を5GW(ギガワット)にまで拡大させる方針などが示されている。ペーター・アルトマイヤー連邦経済エネルギー大臣は、「国家水素戦略」の意義について「水素技術の分野でドイツが世界ナンバーワンとなるための道筋を定めるものだ」と強調している。

連邦州の一部では、すでに独自の水素戦略を策定し、水素社会の実現に向けて動きだしている。ハンブルク、ブレーメン、ニーダーザクセン州らは2019年4月16日、「北ドイツ水素戦略」を策定。水素を化石燃料に代わるものと定め、風力発電など、再生可能エネルギーによってこれを製造する方針を示している。9月には、ハンブルク港で世界最大となる100MW(メガワット)の電解装置を設置する計画も発表された。

南部のバイエルン州では、2019年9月5日に専門研究機関「バイエルン水素センター(H2.B)」を創設するとともに、BMWやアウディ、ボッシュ、シーメンスなどの企業と提携して「バイエルン水素コンソーシアム」を結成した。州政府は、2020年5月29日、「バイエルン水素戦略」を発表し、水素技術の研究開発やインフラ構築などをすすめる道筋を示した。

既存の天然ガスパイプラインを転用して、ドイツ全土に水素供給網構築

連邦政府や州政府の動きを受けて、民間企業でも水素社会の実現に向けた取り組みが始まっている。

ドイツの天然ガスパイプライン事業者の業界団体FNBガスは、2020年1月28日、ドイツ全土5900キロにわたって水素供給網を構築する計画を明らかにした。そのうちの90%以上は、既存の天然ガスパイプラインを転用するという。

また、6月10日には、独電力会社大手RWEと独鉄鋼・エンジニアリング企業ティッセンクルップが提携。RWEの電解装置で製造したグリーン水素をティッセンクルップに供給し、鉄鋼生産に活用する計画を明らかにしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中