ドイツ「水素技術の分野で世界ナンバーワンとなるための道筋を定めた」
ペーター・アルトマイヤー連邦経済エネルギー大臣 John Macdougall/REUTERS
<ドイツでは、再生可能エネルギー由来の電力で水素を生成する「グリーン水素」が新たな動力源として有望視されている ......>
「気候変動アクションプラン2050」のもと、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を目指すドイツでは、再生可能エネルギー由来の電力で水素を生成する「グリーン水素」が新たな動力源として有望視されている。
「水素技術の分野でドイツが世界ナンバーワンとなるための道筋を定める」
2020年6月6日に発表された経済対策においても、中長期施策として、水素技術の研究開発を含め、再生可能エネルギーへの転換に500億ユーロ(約6兆700億円)を投じることが示されている。
6月10日には「国家水素戦略」が承認された。ドイツ国内で水素由来の電力量の需要が2030年までに90〜110TWh(テラワット時)となると仮定し、水素を製造する電解槽の規模を5GW(ギガワット)にまで拡大させる方針などが示されている。ペーター・アルトマイヤー連邦経済エネルギー大臣は、「国家水素戦略」の意義について「水素技術の分野でドイツが世界ナンバーワンとなるための道筋を定めるものだ」と強調している。
連邦州の一部では、すでに独自の水素戦略を策定し、水素社会の実現に向けて動きだしている。ハンブルク、ブレーメン、ニーダーザクセン州らは2019年4月16日、「北ドイツ水素戦略」を策定。水素を化石燃料に代わるものと定め、風力発電など、再生可能エネルギーによってこれを製造する方針を示している。9月には、ハンブルク港で世界最大となる100MW(メガワット)の電解装置を設置する計画も発表された。
南部のバイエルン州では、2019年9月5日に専門研究機関「バイエルン水素センター(H2.B)」を創設するとともに、BMWやアウディ、ボッシュ、シーメンスなどの企業と提携して「バイエルン水素コンソーシアム」を結成した。州政府は、2020年5月29日、「バイエルン水素戦略」を発表し、水素技術の研究開発やインフラ構築などをすすめる道筋を示した。
既存の天然ガスパイプラインを転用して、ドイツ全土に水素供給網構築
連邦政府や州政府の動きを受けて、民間企業でも水素社会の実現に向けた取り組みが始まっている。
ドイツの天然ガスパイプライン事業者の業界団体FNBガスは、2020年1月28日、ドイツ全土5900キロにわたって水素供給網を構築する計画を明らかにした。そのうちの90%以上は、既存の天然ガスパイプラインを転用するという。
また、6月10日には、独電力会社大手RWEと独鉄鋼・エンジニアリング企業ティッセンクルップが提携。RWEの電解装置で製造したグリーン水素をティッセンクルップに供給し、鉄鋼生産に活用する計画を明らかにしている。