影から電気を生成する装置が開発される
光と影の輝度差を活用した新たな発電手法が開発される Royal Society of Chemistry
<影がもたらす輝度差を間接的な動力源として活用する新たな発電手法が開発された......>
一般的な太陽電池は、周囲の光を動力源に用いて発電するため、影があると発電効率が低下する。しかしこのほど、影がもたらす輝度差を間接的な動力源として活用する新たな発電手法が開発された。
シンガポール国立大学(NUS)の研究チームは、光と影との輝度差によって、明るい部分と影の部分との間に電位差を促し、これによって電流を生じさせる「影効果発電装置(SEG)」の開発に成功した。一連の研究成果は、2020年4月15日にイギリス王立化学会の学術雑誌「エナジー&エンバイロメンタルサイエンス」で公開されている。
明るい部分と影の部分が半々になるとき、発電に最適
「影効果発電装置」では、シリコン基板に超薄の金膜がコーディングされている。光がシリコン基板に当たると、一般的な太陽電池と同様に、光子が電子に突き当たり、電子が動き回ってエネルギーが生成される。さらに、光が当たって明るい部分と影の部分とに差があるとき、この活発な電子がシリコン基板から金膜に飛び移ると、電圧が上がる仕組みだ。「影効果発電装置」の発電効率は、一般的な太陽電池の2倍にのぼる。
研究チームの実験によると、「影効果発電装置」の全体が光に当たっている、もしくは影になっている場合、まったく発電しないか、発電してもその発電量はごくわずかであった。一方で、「影効果発電装置」の一部が光に当たると、大きな電気出力が検出された。明るい部分と影の部分が半々になるとき、発電に最適であることも明らかとなっている。
物体の移動をモニタリングする電源内蔵型のセンサー
研究チームは、屋内照明とこれによる影との輝度差で「影効果発電装置」が発電したエネルギーを電子時計に用いることにも成功した。また、物体の移動をモニタリングする電源内蔵型のセンサーとして「影効果発電装置」を活用できることもわかった。物体が「影効果発電装置」を通過すると、断続的に影が投じられ、これによって、物体の存在や移動を記録できるという。
研究チームでは、今後、金以外の素材でも同様に発電できるかどうか、実験を行う。また、「影効果発電装置」のセンサーやウェアラブル端末などへの応用可能性についても研究をすすめる方針だ。