若者は資格なし? 英国民になれる香港人の条件とは
Many Hong Kongers On Course to Become British
現在の国籍制度は1981年に制定されたが、この国籍は6種類に分かれている。そして無条件で英国本土への居住を認められるのは「生粋の市民」のみ。その他の英国民にはパスポートと短期の滞在権が付与されるだけだから、事実上の「二級市民」だ。
1997年に中国に返還される以前の香港は英国の植民地で、住民の大半は英国王の臣民だった。1960年代に入国規制が始まるまでに、多くの香港人が職を求めて英国に渡っている。しかし1981年の国籍法により、中国系香港人の大半は「海外領の市民」ということになり、英国市民の権利のほとんどを失った。
一方で、「人種的にイギリス人」である香港人は、祖父母の一方が英国本土生まれであれば英国市民権を与えられた。その他の海外領にも香港と同様の措置が適用されたが、例外は南米アルゼンチン沖に浮かぶフォークランド諸島だ。1982年の紛争で軍隊を送って以来、英政府は全島民に完全な市民権を付与している。
だが、この特例は香港には適用されなかった。いろいろ議論はあったが、従来の「海外領の市民」に替えてBNOという資格を付与するにとどまった。例外として5万世帯(その大半は返還前の香港政庁職員の家族)にも英国市民権を付与したが、どうせ彼らが香港を離れることはないと見越してのことだった(ちなみに今の香港行政長官・林鄭月娥〔キャリー・ラム〕も、このときに英国市民権を与えられている)。
一方で中国政府は、当然ながら返還後の香港からの「頭脳流出」を恐れた。そして英政府の付与したBNOパスポートを、中国本土では認めないと宣言した。つまりBNOパスポートが有効なのは中国国外だけで、ひとたび中国本土に入れば香港人も一般の「中国人」と同じということだ。英政府も中国側との共同声明で、BNOには英国での居住権がないことを確認した。だから香港人は、BNOでも中国人として生きるしかない。
BNOにもなれない若者
当時の英政府は、香港のBNOが大挙して英国本土にやって来るとは想定していなかった。実際、香港返還直前にはイギリス以外の国籍を取得する香港人も多かった。しかし、共同声明で約束された「一国二制度」がほごにされようとしている今、当初の想定は大きく揺らいでいる。香港を逃げ出したい人は確実に増えている。だからこそジョンソンも、彼らの受け入れに前向きな姿勢を見せている。