最新記事

睡眠不足

アラフィフ女性の睡眠時間を奪う、早朝の子どもの弁当作り

2020年5月27日(水)13時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

もっと具体的に言うと、早朝の弁当作りが大きい。これは、子育て経験のある女性なら誰もが頷くところだろう。中学校までは給食があるが、高校はそうではない。部活の朝練、果ては遠距離通学で子どもが家を早く出るとなったら、朝5時起きで弁当をせっせと作らなければならない。

その実態はデータで可視化できる。子どもがいる男女を、末子の発達段階で4つのグループに分け、5~6時台の時間帯別(15分刻み)の家事実施率をグラフにすると<図2>のようになる。

data200527-chart02.png

女性を見ると、子どもが大きくなるにつれ、早く起きて家事をする人の比率が高くなる。末子が高校生のグループで見ると、5時半で3割、6時で半分近くが起きて家事をしている。弁当作りや朝食の支度だろう。

男性はと言うと、4本の折れ線は寝そべったままだ。子どもが中学、高校に上がろうが変化はない。夫が寝ているかたわら、妻だけが早起きを強いられている光景がグラフの形に表れている。夫婦の「早朝格差」だ。

日ごとにローテーションをする家庭もあるだろう。高校生にもなれば、子どもに作らせるのも一つの策だ。しかしこういう家庭はほとんどなく、高校生男女とその父母の早朝の家事実施率を見ると、母親以外はほぼゼロだ。実態は母親のワンオペといっていい。

「家事分担を見直せ」という提言で済む話でもない。高校では給食はないが、学食や購買部はある。費用を安価にし、利用しやすくすることはできる。弁当の日が週1~2日になれば負担はだいぶ軽くなる。

弁当に手抜きができないのもつらい。今はSNSで弁当の出来映えを競うようなことが流行っていて、簡素な弁当は持っていきにくいようにすらなっている。子どもは減っているのに、弁当プレッシャーは増している。

諸外国の弁当は非常に簡素だ。「世界の弁当」というワードで検索をすると、目が点になるような画像がたくさん出てくる。だが外国の人にすれば、日本の弁当のほうが奇異に映るだろう。「これを毎日作るのか」と。

料理に求められるレベルが高いのは、性別役割分業で社会が築かれてきた経緯があるためだ(拙稿「家庭料理に求めるレベルが高すぎて、夫の家事分担が進まない日本」本サイト、2019年4月17日)。だが時代は変わっている。外注したり、手を抜いてもいい。

<資料:厚労省『国民生活基礎調査』(2016年)
    総務省『社会生活基本調査』(2016年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中