最新記事

新型コロナウイルス

「新型ウイルスは実験室で生まれた可能性もある」とする論文が登場

Scientists Shouldn't Rule Out Lab As Source of Coronavirus, New Study Says

2020年5月18日(月)18時25分
ジェイソン・レモン

カリフォルニア大学デービス校のジョナサン・アイゼン教授はこの結論について「いろんな理由から説得力がない」とツイートしている。例えば分析手法がはっきり示されていないことや、比較対象がSARSウイルスに限られていること、他の仮説が十分に検討されていないことや、新型コロナウイルスが最初から人間によく適応していたとする証拠が十分示されていないことがその理由だという。

「論文にはいくつかの興味深い分析も含まれるが」とアイゼンは述べた。「これらの分析に基づく類論の可能性をきちんと示せたとは言えない」

新型コロナウイルスの発生源に関する調査を進めている米国防総省情報局(DIA)は当初、「自然に発生したのではないか」としていたが、その後、武漢の研究所から誤って出た可能性があると立場を変えている。

専門家も情報当局も、ウイルスが遺伝子操作されたとする陰謀論は基本的に否定している。多くの専門家はまた、はっきりした証拠は見つかっていないにせよ、ウイルスが研究所から漏れた可能性よりも自然に発生した可能性の方が高いと主張する。

ドナルド・トランプ大統領、マイク・ポンペオ国務長官、および共和党議員の一部は武漢研究所の実験室から漏れたウイルスが、世界的大流行の原因になった可能性があるという説に飛びついた。

武漢ウイルス研究所が、現在パンデミックを引き起こしているウイルスと同種のコロナウイルスを研究していることは知られている。だが同研究所の中国人科学者と中国政府当局者は、実験室から漏れたウイルスが世界的な大発生をもたらした可能性を全面的に否定した。

ポンペオは、武漢研究所発生説について、「確信はない」と言いつつ、「ウイルスが研究室から流出したことを示す重要な証拠がある」と主張している。

一方、中国はウイルスが自然発生したと主張しており、当初の分析では、発生源を武漢の生鮮市場としていた。

ただし、bioRxiv(バイオアーカイブ)に投稿された研究によれば、生鮮市場から採取されたウイルスの現存するサンプルから、ウイルスが人間に感染する形質を備える前の中間種が存在したかどうかを判断することは不可能だという。この論文によれば、「中間の動物宿主が市場に存在したとしても、入手可能な遺伝的サンプルには証拠が残っていない」。 結論として、入手可能な市場のウイルスのサンプルは動物ではなく人間からのものである可能性が高いということだ。

ファウチは人工説を否定

パンデミックへの対応で国内からの厳しい批判に直面しているトランプは、新型コロナウイルスの感染拡大の責任があると中国を繰り返し非難。中国に対する制裁さえ匂わせている。

14日朝のFOXビジネス・ネットワークとのインタビューで、トランプは中国に対し「多くの措置をとることが可能だ」と語った。「中国との関係を完全に断ち切ることもできる」

一方、トランプ政権のコロナ対策本部の主要メンバーで国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、武漢研究所発生説には賛同していない。

「コウモリのウイルスと現在感染拡大しているウイルスの進化を科学的に見れば、このウイルスは人為的、あるいは意図的な操作を受けたものではなく、自然界で突然変異による変化を遂げた可能性がかなり高い」 と、ファウチは5月初めのナショナルジオグラフィックとのインタビューで述べた。

「時間の経過に伴う段階的進化のプロセスのすべてが、このウイルスが自然に進化し、種をまたいで動物から人に感染したことを強く示していると、多くの非常に有能な進化生物学者が述べている」と、ファウチは語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中