市場原理が人工呼吸器の絶望的不足を招いた
Economics of Ventilators
市場の力を頼りに技術革新の資源を配分した結果、高価で、可動性が低く、独占所有権を伴う高度な技術を用いて、操作が難しい人工呼吸器しか製造されなくなった。しかし本当に必要なのは、手頃な価格で、持ち運びしやすく、シンプルで使いやすい機器だ。
人工呼吸器をめぐる現在の惨状は、特に公衆衛生のように必要不可欠な分野において、技術革新の意味とプロセスの再考を迫っている。より収益性の高い複雑な技術だけでなく、より手頃な価格で、生産や維持が簡単になり、使いやすくなるような技術革新を促進する、新しい国際的なメカニズムが求められているのだ。
1世紀前に発明された技術を、世界の大多数の国の手が届かないところに飾っておく意味はない。私たちは今、その教訓を苦しみながら学んでいる。
<本誌2020年4月28日号「特集:日本に迫る医療崩壊」より転載>
©2020 Project Syndicate
2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。